下記、コンサルティング事例報告は、個人情報の取扱い及び個人情報保護法により個人名・法人名及び所在地などは全て仮称としております。
遊技場(パチンコ・スロット店)の再生
北海道北東部のパチスロ店オーナー(依頼者)より、本件相談がもちこまれたのは、今年3月下旬のことである。
その都市は、札幌市と類似した開拓歴史があるものの、産業面において二次産業が衰退し(一次産業は堅調である)、大手企業の縮小もあり、近年は毎年人口減(自然増<社会減)の状態となっている。依頼者とは、平成12年12月に私の知人より紹介を受け、以来5年間、依頼者の本業に拘らず親交を深めてきた。遊び付合いを行なっていた訳でなく、依頼者からの相談事を、不動産コンサルティングの資格者として出来る限りの調査及び検証を行ったうえで、回答を行ってきた5年間であった。
私の出張先へ突然電話が入り、
「今、札幌に来ているのだが、谷口さんの都合が良ければ、今日会えないだろうか。」
札幌へ戻るのが17:00頃になる旨伝えると、
「16:00の飛行機で帰る予定なので、それまでに戻れないだろうか。」
無理である旨伝えるも、その後
「本日、札幌に泊まることとした。17:00にて構わないので会いたい。」
迅速に諸業務を消化し、16:00に札幌市内のホテルにて落ち合う。
話し振りから、本業での相談事であり、多分新規出店(札幌地区へ)の相談であろうと推測した。
挨拶のあと、世間話しもそこそこに、
「所有する現営業店舗の営業権継承を前提として、賃貸若しくは売買を行うこととしたいので、協力して頂きたい。」
諸事情を確認したところ、
「パチスロ業界はパワー戦略の様相を呈しており、大が小を食う構図となっている。
機種メーカーの君臨に伴う人気機種確保の難しさ、集客のための店舗拡張・店舗内外装の意匠工事などの設備投資、広告宣伝費の増大、女性客確保のためのイベントなど、全てにおいて多大な資金が先行投下される状態となっている。」
パチスロ業界のみならず、日本の各業界全てが同様であろうと思いながら、依頼者の話を聞いた。
現営業店舗は、同市内の商業ゾーンの中心に位置し、大型ショッピングセンター・ロードサイド型各種店舗が近接した好立地に位置し、素人目にも最高の場所と思われる立地である。
であるにも拘らず、相談を持ち掛けてきた背景を考えるに、設備投資等に伴う債務超過が原因と推測する。私が、風俗営業法も理解していない、パチスロ業界も経験していない旨伝えると、
「難しくはない。難しいのは、集客するための営業手法であり、設備投資等に耐えることのできる業者選定である。但し、近隣同業者の抵抗及び圧力は大変強く、当店が賃貸若しくは売買されるといった情報が漏洩すると、一斉に大型店出店阻止を目的とした攻撃に出てくるであろう。故に本件は業界関係者へは話せない。と同時に不動産がベースのため不動産業に精通し且つ、商業開発などの経験者及び交渉力を有する者でなければ出来ない。だからこそ、お願いしたい。」
頼まれごとを断る理由は全く見当たらず、更にはコンサルタント資格者としての自覚と誇りに懸けて、
「基本事項調査のための期間を1週間頂きたい。1週間後に調査結果に基づくヒアリングをお願いしたい。同時に現営業店舗の財務諸表、不動産概要、過去3期分の決算書を拝見させて頂きたい。そのうえで受託の判断を下したい。」と回答する。
依頼者から関係書類を受領し、調査項目を以下に絞り、作業を開始する。
1.地域内「パチスロ店」マップ作成
2.過去の撤退店のマップ作成(これが一番重要であった。)
3.近隣他店の機種構成
4.近隣他店の機械数・駐車場台数の調査
5.現営業店舗の物件概要(不動産業の重要事項)
6.都市計画法・地区計画の制限調査
7.風俗営業法の許認可
8.大手同業者の出店マップ(全国マップ)
9.人口分布図
10.近隣SCの集客状況
ITの普及に感心し、概ね5日間にて調査を完了、依頼者事務所にて再打合せを実施する。
第1の問題点は何故営業権継承なのか、新規営業許可取得にどのような問題点が内在するのか確認する。
1.近隣競合店の圧力は、一般企業では理解できないものがある。
2.風営法上、新規許可が取得できない可能性がある。
3.従って、既得の営業権を継承することが新規オープンに支障がない。
4.故に、営業権を有する法人格の譲渡が前提となる。
第2の問題点は営業権の継承方法であった。
1.営業権のみの継承
2.債権債務の除外
3.簿外債務の有無
4.第3者債権者の発生
5.新設法人の検討
6.許認可官庁(公安委員会)への対応
第3の問題点は当然、ターゲットの選定であった。
私の調査資料をベースに、撤退店の原因を検証し、各社の資力・営業力・知名度を分析し、ターゲット先2社を選定する。(情報非開示が大前提のため、2社以外には持ち込まないこととした。)
第4の問題点は
売買か賃貸かであったが、原則賃貸を条件として、ターゲット先との交渉状況を鑑みて判断することとした。
勿論、売買・賃貸双方の下限条件を合意する。
上記問題点を各視点から検証し、方向性を合意した。
業務受託に伴う、成功報酬を下記合計額にて合意した。
1.売買若しくは賃貸の場合の、宅建業に基づく正規手数料
2.M&Aに準じる営業権継承コンサルタント報酬
(* 直接経費・間接経費等を勘案し、前1項と同額とする)
同日、札幌に戻り、総勢5名となるプロジェクトチームを立ち上げ、公開資料の準備、ターゲット先への紹介方法を決める。
守秘義務契約書を依頼者へ送付し、宅配された段ボール一箱分の諸書類を開き、早速業務を開始する。
ターゲット先との交渉を開始し一週間後、一社より、賃貸借を条件とした回答を得る。
2ヶ月後、本件の賃貸借契約が締結されたことを先に述べます。
この2ヶ月間の延出張回数は、当職6回、依頼者が3回に及びました。
賃借人とプロジェクトチームの合議は、毎週実施されました。
この2ヶ月間の出来事を本書に記載することは差し控えさせて頂きますが、本書があと20項増加するボリュームでした。
総勢15名(8社)となった利害関係者にて、不動産コンサルティングの試験項目である「金融」「経済」「税務」「法律」全てが引用され且つ、応用された業務であったと思われます。
不動産取引においても、「建物賃貸借」「土地賃貸借」「事業用借地権設定」「公正証書」「資産譲渡」「株式譲渡」「基本合意書」「覚書」「業務委託」「雇用」「保険」「コンサルタント」等の多種多様な契約が締結されました。
宅建業に従事し23年、宅建業を起業し8年経過致しました。平成6年に、不動産コンサルタント技能登録者となり、当該資格が有効且つフルに生かされた本件業務であったと思われます。
勿論、不動産売買・賃貸の当事者としての取引及び、仲介業もコンサルタント業務の延長であり、類似点は数多くあります。不動産コンサルタント技能登録証を提示した仲介案件も数多くありましたが、本件のような多角的な専門知識を駆使し、結果として知的財産を得られた業務は数少なかったと言えるでしょう。
個人も法人も、不動産がなければ生活も事業もできません。
不動産から派生する費用収益を分析・検証し、不動産の運用若しくは転用を検証できること、更には必ず連動する債権債務を包括して検討できる能力が、コンサルタント業者である私たちに求められております。
業務の種は無尽蔵であり、全く立ち直らない景気に、私たちの行うべき仕事及び責任は山積みでしょう。
眠っている不動産問題、凍結している問題を解決していきます。
最後になりますが、本件依頼者から、依頼者の知人(同業者)を紹介されたこと申し添えます
不動産売買のための問題解決
Y弁護士(遺留分権利者代理人)より、その不動産に関する相談が持ち込まれたのは今年4月のことである。
800坪の広大な敷地に、延床50坪の戸建に居住していた亡M氏の所有不動産であった。
当該地は、札幌市制となる前の旧村時代から続く街であり、再開発されたニュータウンとは一線を画す、旧家の存在する街並みであった。
築30年となるその住宅の建設当時の存在が、容易に想像できよう。
私へ持込まれる以前のその不動産に関する履歴を簡単に説明しよう。
昨年1月にM氏が市内病院にて亡くなられる。入院期間は10年に及び、その期間は病院へ住民票も移し、病院が自宅ともいえる入院生活を送っていた。
M氏の両親は既に他界しており、配偶者のいないM氏は、生前中の入院前に、3人の子供達と養子縁組を結んでいた。
入院期間も長期に渡り高齢であったM氏は亡くなられる2年前に遺言書を作成し公正証書として、K弁護士(遺言執行者)に託していた。
遺言書の内容を本書へ記載することは差し控えますが、後に相続人及び遺留分権利者と調停を行い所有権問題のなくなった不動産とだけお伝えします。
Y弁護士より、売買を前提としたその不動産の概要を聞き、早速、調査を開始する。
1.実査
現地へ行き、間口25M 奥行80Mの袋地状800坪の敷地を観る。
高さ10Mに及ぶ大木が20本前後そびえ立ち、玄関前の通路には重さ1~2tクラスの庭石が数十個敷されている。裏庭には池、石灯篭、ブロック造納屋など、生前中の生活が想い起こされる。長い間居住されていなかった建物はかなり朽ち果てていた。
離れ家もあり、今現在も住人が居住している実態を確認する。離れ家は、反対側道路に接しているが、あきらかに道路と推定される部分に建物が建っている事も確認する。
境界に隣接する建物は推定20件弱あり、本件敷地へ侵入している庭・菜園・塀なども数ヶ所存在していた。
2.調査
市・区役所・法務局・諸官公庁にて所定の調査を行い、以下の問題点を発見する。
①敷地内、電力柱・電話柱の存在
②敷地内建物は全て未登記
③私設の上水道管
④未登記建物の道路越境
⑤政党看板の設置
⑥ゴミステーションの存在
⑦囲にょう地通行権の存在
⑧下水道管の隣接地越境
⑨道路として供されている土地の道路法に該当しない道路の存在
⑩明治33年に所有権登記された土地であり、数回の分筆(常に据置地)を経て、今日に至る。
3.再打合
Y弁護士・K弁護士へ調査結果の報告を行い問題点の解決のための検討に入る。同時に当該地での可能な事業の検討に着手する。
4.事業計画
①住宅事業(分譲マンション、宅地造成、タウンハウス、テラスハウス、賃貸アパート、etc)
②商業施設(高齢者住宅、介護施設、病院、スーパー)
③娯楽施設
④更地としての駐車場
5.事業方向性及び土地鑑定評価
ディベロッパー、ハウスメーカー、設計事務所との合議を実施しタウンハウス形式の事業化が最良であると判断する。但し、土地鑑定評価の根拠は宅地造成に基づく戸建住宅計画を前提に評価を行う。
Y・K両弁護士へ上記報告を行い相続人・遺留分権利者との打合せを実施し、売買に関する合意を得る。
6.不動産売買
情報公開後の2週目、T不動産開発より、全く類似した事業化に基づく事業計画にて土地の買受申込を受ける。
7.売買契約
無瑕疵無負担の土地実測・更地渡し。但し隣接地との既得権益は継承する。
但し、以下の諸問題を特約条項として明記する。
8.諸問題
売買契約締結以降、引渡しまでに解決した問題点及び、解決方法
①囲にょう地通行権
通行権の範囲を特定、通行権部分へ上下水道管を敷設(移設)
電柱関係も同様の処理を行う。
②隣接地越境物
合計5ヶ所。
隣接する土地所有者の土地無断使用であり法的明渡請求が可能なことは曖気にも出さず、各隣接地所有者との越境経緯を確認し、全て撤去の合意を取り付ける。
③借家未登記建物及び建物道路越境
借家敷地を本件売買契約の対象から切り離す。しかし、後に借家人との間で切り離された土地・建物の 売買を合意し、道路越境問題を解決することとなる。未登記建物の築年月が不明な為、固定資産税課より課税開始年度を確認し新築時期を特定する。道路課より道路認定経緯を確認し、越境建物が既存不適格であるも、法的には問題点がない事を確認し、売買契約を締結する。
④境界承諾拒否2件
明治33年以降、更正登記の行われていない土地であったため、地図・地積ともに更正登記が必要となるが、隣接地所有者2件から境界承諾を拒否される。
拒否理由は相隣問題の未解決であった。土地家屋調査士へ依頼し、法務局に対し、境界承諾合計19ヶ所中、拒否者が数件あった場合でも地図・地積更正登記が可能であるか否か確認していただく。条件次第にて問題なしとの回答を受ける。しかしながら、承諾拒否2件に対しあらゆる手法を駆使し、最後には当方からの逆承諾書を提出し、再交渉を行う。結果、1件は承諾を得るが最後の1件は捺印を拒否されるも、地図・地積の更正登記は完了させる。
⑤道路越境部分の否道路敷地
市役所道路課より、建物が越境し、且つ、幅員・隅切りの問題もあり、道路法上のいかなる道路にも該当させられない。しかし、現に道路として供され、数軒の住人が生活道路として利用されている実態もあり、道路以外の転用はないとの確約を受ける。
⑥その他
看板・インフラ関係など、利害関係者との交渉を重ね、合意解決する。
本件諸問題は、当初の物件調査時点にて把握しており、解決にあたっては、Y・K両弁護士からも「亡M氏としての問題であり、我々(弁護士)にて解決することが望ましいが、貴殿が交渉して解決していただけるのであれば、貴殿にお願いしたい。」といった話合が行われておりました。
私自身の20年超に及ぶ不動産売買経験と、不動産コンサルティング技能登録者として「私が解決出来る問題です。但し、解決に伴う交通費・人件費・交渉業務報酬を宅建業法に基づく報酬とは別に、ご請求させて戴きます。」との内諾を得て、合意する。
不動産売買において、土地・建物に含まれる瑕疵は多数存在します。しかし、解決の為に要する労力、時間、経費は全て異なります。問題点をいち早く把握すること、及び解決方法を事前に打合せすることが必要です。
本件事例は、不動産コンサルティング技能登録者としての業務及び成功報酬を授受できた一例に充分該当すると認識しております。尚、本件売買は引渡迄の期間を3ヶ月と定めました。勿論、諸問題解決を考慮しての期間です。平成17年9月に、本件売買が無事完了したことを申し沿えます。
平成17年10月
公衆浴場(健康センター)アウトソーシング
このコンサルティング事例報告(Vol.3)は、第1回事例報告(Vol.1)に基づくコンサルティング実績の結果から発生したことを先に述べます。
昨年8月にコンサルティング業務が終了した「遊技場」(第1回事例報告)とほぼ同立地に本件浴場(健康センター)が位置し運営されていた。
浴場の土地・建物の所有者でもあり経営者であるKオーナーは、本社を札幌に置き、週一度現地と札幌間を往復する業務を約10年間続けていた。
私とKオーナーとの関係は、Kオーナーが当健康センターのオーナーになる以前からの付き合いであり、この10年間は何度となく同センターの構造改革に意見を酌み交わしてきた。
「遊技場」のコンサルティング業務中も、2度3度と同センターを訪ねていた。
昨年10月、Kオーナーより連絡を受け19:00待ち合わせ場所の料亭で、直近一年間の同センターの
①売り上げ推移表
②収支実績表
③入館者数一覧表
④図面等々 呈示される。
同センターの売上4本柱は、
①入浴料・宿泊料売上
②飲食(レストラン・居酒屋)売上
③自販機・売店売上
④カラオケルーム売上 に分かれる。
Kオーナーより、現状は全て直営となっている各部門を全てアウトソーシング出来ないか、但し各部門は全て連動しており、部門提携が必要不可欠である。
又、健康センターは年中無休、24時間営業及び、健康センター入館者が各部門利用者の大多数を占めており、センター入館者を維持することが各部門及び全体の収益向上につながる。
しかし、ここにきて近年台頭してきた「スーパー銭湯」も平成18年8月に同センターの約500M先にオープンする。
「スーパー銭湯の進出は止められない。いかに入浴料370円に入浴料1,200円が対抗するかという知恵が必要になる。」
私自身いつかは受けなければいけないコンサルティング業務であることを予想していたため、特段の驚きもなく、
①施設内の実査
②各部門別バランスシートの確認
③過去の広告手法及び実績の確認
④各施設メンテナンス状況・メンテナンス負担金状況
⑤各施設什器・備品類一覧の確認
⑥従業員・パート社員のシフト表・給与明細
⑦その他
上記の諸資料を開示して戴く依頼を行い早速業務に着手することとなる。
①地域MAPの作成
②レストラン・居酒屋の地域MAP
③地元業者の勢力図
④中央業者の進出一覧
「遊技場」での調査成果に感謝し、上記調査を完了させる。
Kオーナーと再打合せを行い
①レストラン・居酒屋に関しては、従業員(正社員・パート社員)の継承を絶対条件とし、動産類は無償貸与のうえ、賃貸借物件とすることで合意する。
②カラオケ店に関しては、従業員を健康センターへ移籍し、居抜状態にて賃貸借物件とすることで合意する。
③前①・②項の業務完了後、本丸である健康センターの運営改革に着手する。
厨房設備・冷暖房設備・機械設備に関しては、使用可・不可に拘らず、無償貸与し、維持管理責任は借主負担とした。
各部門を賃貸借する場合の重要課題として
①双互の営業侵害制限
②カラオケ付宴会・入浴付宴会といった双互利用に伴う業務提携及び特別料金設定
③開店時間・休業日制限
④利用客の各部門料金精算
などの問題点を賃貸借契約締結時充分検討することとする。
本件コンサルタント業務に伴う報酬を取決め、Kオーナーと合意する。
勿論、別途宅地建物取引業に基づく約定報酬も合意する。
11月に入り、賃貸借条件の概要を固め、「レストラン・居酒屋」「カラオケ店」の募集を開始する。
「レストラン・居酒屋」 5社交渉
「カラオケ店」 2社交渉 を行い各々一社と大筋の合意を得る。
年末年始の繁忙期が目前のため、詳細の詰めに入る。
カラオケ店に関しては、店内改装工事のスケジュール調整がつかず、年末年始の営業を見送ることとする。
レストラン・居酒屋部門に関しては、多大な収益の見込める時期であり、早期の営業継承を大前提に年内オープンにて合意するが、ここに大きな落し穴が待ち構え、一時は修復不能な状態となってしまう。
私自身、起こるべくして起こしてしまった問題でもあり、未然に防げた問題であったともいえる。
ここで、その起こった問題点を検証したい。
ことの起こりは、従業員継承にともなう、解雇通知から始まった。
健康センター運営にとって、飲食部門は必要不可欠であり、センター営業中は、絶対に休業出来ない部門である。
しかしながら厨房社員がいなければ当然飲食の提供が出来ないことは当然である。
雇用条件を同条件とした従業員の継承であったはずが、新旧両オーナーの説明内容に若干のニュアンス違いがあり、現厨房社員の多数退職といった事態が発生したのである。
社員の退職には社員の対会社不満が必ず内在し、不満が露呈したことで、新旧両オーナー間においても、不信感が芽ばえてしまったのである。
一度芽ばえた不信感は、他の事柄に対しても疑心暗鬼となって波及し賃貸借の中断という事態に直面してしまう。
従業員継承業務は、コンサルタント業務契約の条項に明記された業務のため、勿論業務放棄など許されるはずはなく、退職希望社員との再面談、その他の善後策の検討両オーナーの関係修復といった馴れない業務を繰り返し、12月20日若干曇りがちであったが、新規開業となる。
コンサルタント業務の難しさを痛感した一例であった。
コンサルタント契約を締結していなく、不動産賃貸借の仲介業務であった場合、当職の業務範疇外として断っていた事柄なのか若しくはサービス業務としてお手伝いを行っていたのか、疑問が残るところである。
しかしながら、不動産コンサルティングの資格を有し、不動産コンサルティング業務が確立されたからこそ、成し得られた業務であり、当資格を制度化した関係官庁、関係団体の意図するところではないだろうか。
尚、当健康センターのコンサルティング業務は今現在も進行中となっている。
初期調査における地域MAP作成時に当該地周辺には病院(専門医院)が少ない事に気付き、当健康センターの駐車場(国道面)敷地を利用し「メディカルビル建設」の計画を立てる。
Kオーナーの賛同のもと医療関係者へ打診したところ、早速、調剤薬局1社、医院2名から問い合わせを受ける。
今年8月を目標に「メディカルビルプロジェクト」をスタートする。
平成18年1月
事 業 用 地 拡 張
昨年12月、S社(本社:札幌市中央区)取締役より、「札幌市東区に28店目の店舗のオープンを予定している。同店舗の駐車場用地を本件敷地以外に確保して戴きたい。」旨の依頼が入る。
住宅地図を確認し現地を実査した結果、以下の状況となっていた。
S社の意向として「駐車台数100台分(土地面積 概算1,000坪)以上は確保したい。隣接地が好ましいが、飛地であれば半径100M以内としたい。」とのリクエストを受ける。
当然のターゲットとして
1.西側「F自動車 社員駐車場」を第一候補
2.北側「印刷会社」敷地の一部を第二候補
3.国道隔地「畑」を第三候補
4.南側「GSM」敷地の一部を第四候補
とした。
S社へターゲット用地の報告を行い、大筋の了承を得る。
同時にターゲット用地の確保態様として、売買・賃貸の何れの場合の方向性を合意する。
本件業務をコンサルティング業務として、受託する事につき、S社と合意する。
但し、成功報酬を絶対条件とし、売買・賃貸のいずれも不成立の場合は、調査費用及び日当、賃金なども含め、一切の報酬が支払われない事とした。
(不動産業を営むものの第六感で、本件不成立になるとは全く考えられなかった。)
目的土地の「所有者」「使用者」の調査を実施する。
調査結果に基づき、ターゲット先への直接交渉を開始する。
1.西側「F自動車 社員駐車場」
駐車場の土地所有者はF自動車ではなく、個人のK氏であり、F自動車へ土地をリースしている事が判明する。しかし、F自動車の工場、事務所敷地は、F自動車の所有であったが、以前にK氏より売買にて取得していた事も判明する。
早速、K氏宅を訪問し、来訪主旨、用件を伝える。(K氏夫人応対)
K氏夫人より、ご主人でなければ判らない旨、説明される。
尚、K氏はF自動車へ勤務(役員と推定する)している事が判明する。
ご主人への伝言をお願いし、辞去する。
2.北側「印刷会社」
印刷会社は20年前に土地を取得し、翌年建物を建設していたが、取得時点から抵当権の設定はなかった。
堅固な建物が、S社事業敷地に接して建てられているため、万一敷地が確保できても、S社敷地と一体にはならないこととなる。
よって、飛地を前提に敷地内を実査するも、空地は全て通路若しくは工場としての敷地となっている為、未利用地など全くなく候補より脱落となる。
3.国道隔地「畑」
所有者のY氏と面談(推定年齢 70才up)
推定年齢より、相続対策を検討していると推測、且つ農協組合員であることは間違いないが、農業生産はないと推測する。
相続対策の節税を条件に交渉を開始する。
Y氏より、
「畑として供されているのは、4,000坪程である。しかし、農業生産はなく有効利用は考えている。」との回答を受ける。
予想通りの回答であったが、重大な問題点が露見する。
国道を横断する際の交差点、横断歩道がS社敷地より左右とも100M以上離れて存在し、用地が確保出来ても、新設の横断歩道(信号)が必要となるのである。
信号、横断歩道の新設申請は、申請理由が民間の営利目的では全く許可されない為、印刷会社同様、候補より脱落となる。
勿論、政治的手法を行使することにより、信号(横断歩道)を設置することが可能と判明するが、所要時間及び高額な経費面からも断念する。
4.南側「GSM」
正攻法で無理なことは百も承知なため、裏ルートを利用、しかし予想通りの結果となり、候補より脱落となる。
この結果、本件ターゲットは「F自動車 社員駐車場」のみに絞られる。
F自動車 社員駐車場の土地所有者K氏へ第2次折衝を行う。
K氏夫人より「敷地は、1,700坪程度あるが、全てをF自動社へ貸しているわけではない。一部空地があるはず、詳しい事は主人に聞いてほしい。」
暮れも押し迫った年末、ようやくご主人との面談が可能となる。
①土地は全体で1,700坪あるが、内100坪をD整備会社、1,000坪をF自動車へ貸している。よって空地は500~600坪程度であろう。
②S社の店舗と接する部分はF自動車が利用しており、F自動車へ借地場所の移動をお願いし、了承されれば残地の利用は可能であろう。
③しかし、自分はF自動車の社員であり、強引なお願いは出来ない。又F自動車が移動に反対となれば、諦めて頂きたい。
1,700坪の土地をロケした結果、全敷地をF自動車が使用していたが、契約書上の面積は1,000坪であった。
土地の賃貸料は、1,000坪相当分のみであった。賃料に関しては教えていただけなかったが、総額及び坪単価は推定できた。
再度K氏へ事情を確認した結果
④今般のS社からの申出は、自分達にとって好都合の内容である。
⑤土地はF自動車以外は利用出来ず、結果として、契約面積に拘らず、暗黙の内に全体をF自動車が利用している。
⑥契約上は社員駐車場であるが、実際には、F自動車の整備車両も頻繁に駐車している。
しかしながら、k氏の会話には、F自動車にはお世話になっている。F自動車とは今後も友好的に付き合いたい。といったニュアンスが感じられ、借地場所の移動交渉には困難を極めると思われた。
年明けにF自動車との交渉を行いたい旨伝え、F自動車担当者とのアポイントをK氏へ依頼し、了承を得る。
年明けの1月中旬、K氏同席の上、F自動車担当者と面談する。
土地を無断使用していることは真正面から伝えられないものの、F自動車担当者も契約面積と実体の相違は充分認識している様子であった。
3者交渉の結果として、原契約書記載面積と、土地の全体面積をお互い再確認し、F自動車担当者より、
1.移動に関しては協力します。
2.しかし、移動後の契約面積は必ず1,000坪を確保して戴きたい。
3.S社との借地境界に金網フェンスを設置して戴きたい。
の回答を引き出す事となる。
K氏も私もF自動車担当者の会話矛盾点に気付くも、指摘せずF自動車の条件を受け入れる。
F自動車の条件をS社へ報告を行う。
①土地の借り受けが可能となった事。
②借り受けの為に土地整備費が負担となる事。
③借地面積が600坪前後となる事。
④S社店舗と借り受け敷地が接する事。
⑤推定賃料は時価額を大幅に下回る事。
S社の合意を得て、土地測量を行い、借地面積の確定を行う事に着手する。
測量費用は、K氏とS社の折半とし、測量結果に基づき、K氏・F氏・S社と再協議を行うこととした。
S社にとっては面積において若干不本意であったが、借地面積600坪以上の確保を条件に「賃貸借のための基本合意書」を締結する。
本件業務は、結果として1,000坪の土地は確保できなかったが、事業店舗の敷地と接することが出来たこと及び、借地賃料がF自動車の賃料に連動したことなど、S社にとってイニシャルコスト・ランニングコストの双方の負担が軽減され、メリットのある結果となった。
今年のゴールデンウィークには、S社28店目がオープンすることとなった。
事 業 用 地 拡 張 Part Ⅱ
事例報告Vol.4の同S社より、札幌市某区にオープン予定の29店目に関し、「駐車場が足りない。28店目同様の業務をお願いしたい。」旨の依頼が入る。
現地の状況は以下の通りであった。
当然の業務(作業)として、
第1ターゲット・・・・・・・S社駐車場(敷地 500坪)の敷地拡張
第2ターゲット・・・・・・・S社事業店舗(敷地 1,000坪)の敷地拡張
第3ターゲット・・・・・・・道路隔地の土地確保
となるが、賃貸・売買いずれの場合も、宅地建物取引業としての初歩的な業務になると思われた。しかし、ここに大きな落し穴が待ち構えていた。
第1ターゲットとしてのS社駐車場(500坪)に隣接するT氏宅へ訪問し、ご主人(推定80才代)と面談する。
<結果>
1.T氏の所有する不動産に関しては、一切のことを某不動産業者に任せている。よって、売買・賃貸・ 有効利用などは全て、その業者を通して行い、又指示に従う。
2.しかし、今は自分(T氏)の判断で、不動産は一切動かさない。
3.先代より何十年も農家を続け、残った最後の土地である。
4.跡取りも、どんなことがあっても売っても貸してもならないといっている。
全く取り付く島もなくT氏宅を辞去する。
直接交渉がダメであれば、間接交渉となり、本件土地を管轄するH銀行の地域支店長及びS銀行の地域支店長へ連絡する。
両行の支店長の回答は全く一致し、「T氏は勿論存じ上げておりますが、当行には個人口座もなく、更には過去より一度も取引がございません。」
必然的に某不動産業者は市農協と推測し、次の作戦を練ることとした。
第2ターゲットとしての、S社店舗に隣接するG氏宅、K氏宅との交渉も同時に実施した。
法務局での調査の結果、G氏宅は、土地・建物ともにG氏の奥様名義であった。故にK氏はG氏を大家とする借家人と判明する。
G氏宅へ訪問し、G氏ご夫婦(ご夫婦とも80才前後と推測)と面談する。
<結果>
1.以前(30年前)は、現在K氏が居住している家に住んでいたが、何とかして、今居住している土地がほしく、当時の土地所有者と何度も交渉し、やっと購入することが出来た。20年前に今の家を建て引越しを実現した。
よって、現在の土地・建物には並々ならぬ愛情があり、よほどの事情がない限り、売却は考えられない。
2・夫婦とも高齢ではあるが、まだお互い元気であり片割れにはならない。
3.一人になれば、この一軒家での居住は無理と思われる。その場合には、子供達と相談しなければならないが、売却する可能性はある。
4.裏の家は、築40年の古家であり、借家としてK氏へ賃貸している。
K氏は、ご主人一人(60才位)で、現在は生活保護を受けている。嫁いだ娘さんがたまに遊びに来ているようだ。
G氏所有地全てを購入させて戴きたいと強くお願いするも、非常に高いハードルがある事がわかり、こちら側も若干トーンダウンしてしまう。
一旦辞去し、買収する為の方法を検討し、以下の方策とした。
1.時価額×150%の買収価額提示
2.相続後に売却する場合のデメリット
3.借家人の移転先確保
4.G氏ご夫婦の移転先(新築・中古・賃貸)説明資料の用意
5.売却時の租税説明資料の準備及び、節税方法
以下の方法をS社了承のもとまとめ上げ、再度G氏ご夫婦と面談する。
G氏には、55才の長女夫婦(専業主婦、分譲マンション居住)と50才の長男夫婦(子供ナシ、公務員官舎居住、警察署員)がともに札幌市内に居住していた。
数日後G氏ご夫婦へ、時価額×150%の買収申出及び、租税説明資料を提示するも、丁重に売却を固辞される。「是非、娘さん、息子さんと相談して戴きたい。決して悪い話しではない。」旨を伝え、G氏宅をあとにする。
翌日、55才の長女より「大変良い話なので前向きに検討したい。1週間程待ってほしい」との連絡を受け、強い期待を持つ。
しかし1週間後、長男(所轄の幹部であった)より
「父、母ともに現在の住宅に愛着があり、万一引越しをさせた場合、精神面及び肉体面の双方に不安が生じる。金銭的な魅力は理解するが、両親の健康が第一であり、お金の問題ではない。姉が検討すると言ったようだが、あきらめて戴きたい。」との最後通告を受け、第2ターゲットの買収を断念する。
店舗敷地の拡張を断念し、第1ターゲットの駐車場部分の敷地拡張の為、市農協地域支店へ連絡を取り、担当者と面談する。
結果は「隣接地に関しては、売買・賃貸いずれもT氏を承諾させる事は出来ない。勿論農協に全てを任されているが、本件は100%無理である。」
第1ターゲットの駐車場の敷地拡張も断念することとなる。
しかし、道路斜向いの同T氏所有地(借家物件)の件を確認すると、農協より、「その物件であれば可能性がある。又隣接するA氏の土地も可能性がある。調べてみる」こととなる。
S社へ現状報告を行い、新規駐車場用地は、可能性として第3ターゲットの道路斜向いのみの件を伝える。
S社との合議の結果、
1.道路斜向い地は、離れ地のため原則賃貸として交渉する。
この場合の賃料は相場×150%を上限とする。
2.売買の場合は、時価額を希望するが、土地所有者の意見を確認し判断したい。
3.第1及び第2ターゲットの土地も諦めず交渉を継続する。
市農協へ、道路斜向いの土地の方針を伝え、3日後以下の回答を受ける。
1.売買であれば応じる。賃貸は不可。
2.しかし、売りたい訳ではないので時価では不可。
3.売価は時価額×150%が条件である。
4.借家人が居ることを了知の上の売買である。
5.借家人への事前立退交渉は不可。
希望する賃貸借が不可であり、売買価額・立退問題等々、S社の承諾が難しく、S社への報告前に以下の業務を実施した。
①市農協には内密に、当社のダミーを借家人へ接触させる。
②不動産鑑定士へ依頼し、時価額が下がっていることの書類を作成し、評価を算出する。
③第1ターゲット・第2ターゲットの再交渉を実施し、完全に交渉不成立であることを確認する。
結果
①借家人との立退明渡交渉を基本合意する。
②T氏・A氏の両名との売買価額を基本合意する。
(合意した売買価額は、諸資料作成の効果によりほぼ時価額となる。)
③明渡移転料・解体費等を確定させる。
上記結果をS社へ報告し、S社の満足な合意の上、当月月初に、T氏・A氏双方との売買契約が完了した。
簡単と思われた第1・第2ターゲットが、所有者側の諸事情により交渉不成立となり、事前準備はしていたが、不要になると思われた土地情報が、結果として交渉成立した本件業務であった。
コンサルティングフィーも売買成立に伴う標準報酬が上乗せされたものとなる。
当事者全員の笑顔で閉められた業務であった。
平成18年4月
商業テナント誘致
45歳の築年誕生日を間近にしたそのビルは、地下街「ポールタウン」の出入口に接し通称「狐小路」に面して在していた。
パソコンの “2000年誤作動騒動“ 時にそのビルオーナーと知り合い、以降同ビル入居者の入退居・ビル補修・メンテナンス・ビル建替計画など、ビルの健康診断・リハビリ・体力維持といった業務に取り組ませて頂いた。
同ビルは、当時「市街地改造ビル」という名称において、一部行政の補助を受け、現在でも余り例を見ない各階の天井高が4,500mmUPというビルであった。
しかし、45歳の歳月は人間に例えるならば慢性期の病状を抱えているいる状態であり、ケアの為の看護を私が行っているといっても過言ではなかった。
ここで同ビルの所有形態を簡単に説明しておこう。
ビルの所有権は、個人のA氏と法人B社(代表者はA氏)の区分所有(縦割2分割)となっており、土地はA氏とB社の共有(持分2分の1)となっていた。
敷地は、100坪弱であるが、建ぺい率はほぼ100%消化し、建物は地下1階地上6階建、延床600坪弱であった。建物は2分割の区分所有となっており、A氏が代表のB社が所有する区分建物部分は、B社の本業である「服飾・美容」の直営店舗として使用し、A氏個人が所有している区分建物部分は、全て貸しビルとして地階 飲食 1階~2階 物販 3階UP 病院・オフィスとなっていた。
同ビルは1・2階が強化ガラスを外壁とした仕様であり、1階よりも2階が “顔“ といえる建物であった。
昨年12月、2階テナント(物販業)の設備にクレームが発生する。原因は解明するが、2階テナント使用者(C商事会社)責任なのか所有者責任なのかにおいて論争となる。
双方引かず、結果としてテナントとして入居していたC商事会社が憤慨し、C商事会社の退居という最悪事態へ発展する。
論争した結果の退居であったが、契約終了事由は契約期間満了における通常退居となり、入居時の原状回復(スケルトン状態)が条件となり、退居確認書をオーナーとC商事の間で取り交わす。
2階設備のクレーム発生時以降、全て私がオーナー(A氏)代理となり、C商事との交渉を行った。
C商事の取締役(専務)と退居確認書のやり取りを行っている最中、C商事の専務より「退居したくて退居する訳ではない」といった雰囲気が感じられ、C商事の立退完了迄は色々な問題が発生する予感にさらされる。
今年2月、C商事退居(退居日7月末日)を前提として、2階テナントの募集業務を開始する。
2階テナントは、1階部分に専用の2階出入口を有し、路面通行者の目を引く良好なロケーションの店舗であった。
故に設定賃料も30,000円/坪と高く設定されていた。
Aオーナーの強い申出もあり、新規募集の為の設定賃料を40,000円/坪とした。
(実際は35,000円/坪が上限である事を伝える)
しかし、ここで第一の問題が発生する。
退居テナントの預り敷金が5,000万円であった為、敷金返還の財源確保により新規の募集敷金を同額の5,000万円とした。
オーナーも私も5,000万円の敷金は無理を承知のうえで募集を開始する。
C商事の物販店として営業されていた2階テナントであったが、ターゲットを飲食(否物販)に絞り、且つ東京が中心として業務展開している業者を営業先として選定する。
主旨は高額賃料に耐えれる業態との判断であった。
1.カフェ専門店
2.ファーストフード
3.高級和食
4.海鮮
5.洋食
インターネットを経由し、物件情報を選定先企業へ送信する。
着信と同時に担当責任者へダイレクトメールを入れる。必要に応じ添付諸資料を返送する。
2月下旬、全国区の飲食チェーン店を展開するD企業より入居申込を受ける。それを皮切に計3社より入居申込が入る。
しかし、いずれの企業も募集条件を下廻った申込であった。
D企業との面談を実施し、詳細を詰め、内覧スケジュールを決定し、図面UPの準備にとりかかる。
図面作成後、出店シュミレーションを行い、最終経済条件の詰めとなることを確認する。
待機中の2社へ前記状況を伝え、今暫く待っていただくこととした。
10日後
D企業より以下の回答を受ける。
・賃料35,000円/坪
・敷金3,500万円
・店舗工事に伴うオーナー負担金の要求(躯体に付随する設備工事費の要求)
・賃料の始期は、営業開始日
賃料・敷金いずれも合意可能であったが、オーナー負担工事が合意出来ず、D企業との交渉を中止する。
即日、2番手のE企画へ連絡し契約条件の詰めに入る。
3日後
E企画より以下の回答を受ける。
・賃料35,000円/坪
・敷金2,000万円
・スケルトン状態における引渡
・工事期間中の賃料は50%相当額
E企画代表へ敷金の上乗せを要求するも逆に「最近は預り敷金を受領しない傾向にある。既に敷金を預っているビルオーナーも賃貸借期間中に敷金の返還を行っている方が増えている。」
E企画との交渉を留保し、3番手のF食品との条件確認に入ろうとしたその時、退居予定のC商事会社より「是非お会いして話したいことがある。」
と連絡が入り、C商事代表と面談する。
結果は以下の通りであった。
・退居における合意はしたが入居継続は可能であるか。
(既に某業者と交渉している事実を伝える)
・継続出来る場合、賃料は35,000円/坪迄の引上げを勿論了承する。
・敷金は現状のまま継承する。
・勿論Aオーナーが入居継続不可ということであれば、退居合意書通りに退居する。
真意を確認するも
・冷静に考えれば大人気なかった。
・築45年のビル故、設備不良は当然であり、双務責任であろう。
・本物件は特殊な物件であり、同様の物件が本物件以外見当たらない。
・退居の場合の現状回復費用が高く経済損失が大きい。
Aオーナーと再協議する旨伝え、一旦辞去する。
「(Aオーナーより)何をいまさら勝手に・・・・・・・」という言葉は当然として
・敷金問題が無くなる。
・賃料は引上げとなる。
・工事期間が無いため、賃料の空白期間が無くなる。
・原状回復といった経済損失が無くなる。
感情問題は別として、常識的には好条件へ移行したと解釈できる旨、Aオーナーを説得した。
翌日Aオーナーより
・契約期間は5年間、但し敷金の内1,000万円は返還し4,000万円を預り敷金として継承する。
・期間内解約はペナルティあり。(敷金没収)
・賃料は35,000円/坪、但し税別
上記条件にてC商事と再度交渉することとなるが、
Aオーナーより
「C商事の件は秘匿のうえ、E企画へ再度敷金の値上げ交渉を行って戴きたい。敷金3,000万円(提示は2,000万円)出して戴ければE企画と契約したい」
Aオーナーに対し
「私(谷口)のクライアントであるE企画へその提示を行うことは、私のクライアントを失う結果となる。よって、申し訳ないが私からは話せない。ご理解して戴きたい。」旨伝える。
Aオーナーも私の立場を理解し、本件はC商事と再契約することを前提に最終交渉へすすんだ。
C商事の専務と再面談し、素直に私の疑問をぶつける。
「D企業・E企画・F食品との交渉を行っている事がわかっていたのでは・・・・・・・」
「更には、交渉内容もわかっていたのでは・・・・・・・」
C商事の専務より、口頭での回答はなかったが、その顔は全てを肯定していた。
Aオーナーが東京日本橋を中心に都内4店舗出店を完了させており、AオーナーとD企業・E企画・F食品の各代表者との面識があってもおかしくないことは容易に想像できる。
従前賃貸借契約の解除証書を校正し、新賃貸借契約書を校正する。
甲・乙双方の同意を得て、6月末日新賃貸借契約の調印が完了する
平成18年7月
飲食店開店
事例報告Vol.6のテナント募集時に出店申込を受けたD企業が、本事例報告Vol.7の主人公となったことを先に述べます。
事例報告Vol.6において、D企業との交渉は中断したが、その時にD企業より
「実は平成18年中に札幌市内において新規30店舗の出店を計画している。そのためには店舗(リースその他)の情報をどんどん集めなくてはならない。是非谷口さんの力をお借りしたいので協力してほしい。」といった相談を受けていた。
但し、その時点では「当社(麗雅)は、テナント情報を専門に扱っている業者ではないので、どこまでご要望にお答え出来るかわからない。」と回答していた。
2ヶ月後、再度D企業と別件商談する機会があり、その時点においても全く同様の依頼を受けたため、「もし、私(谷口)が貴社(D企業)の新規出店に協力するのであれば以下の事項を開示してほしい」と伝える
①ピンポイントの出店エリアMAP
②店舗のハード(面積・設備・仕様)条件
③リース賃料等の差別条件
④区分建物若しくは一棟建物の買取検討
⑤定期借地権の権利取得
D企業担当者より
「わかりました。一両日中に回答致します。内容は当該データーを送信します。」と返答される。
翌日
①出店エリア一覧
②簡易出店条件
のデーターをメール受信し、詳細に関する話合いの場所を設けるための日時・場所を設定する。
D企業担当者へ
①リース物件に関しては、当社(麗雅)は扱わない。賃貸借専門業者に一任して戴きたい。
②当社が得意としている分野は、リースバック、定期借地であり、ノウハウは他社に負けない。
D企業より
「長崎市及び名古屋市の2物件にて定期借地を設定し、オープンした店舗がある。又、東京都内において、区分建物の売買及び一棟売買を行ってオープンした店舗があるので、それぞれのスキームを提示する。」といった回答を戴く。
当社より
「若干でも同業他社の諸条件より貴社(D社)の諸条件が勝っていれば、出店可能な店舗は必ず紹介できる。」と伝え、お互い協力関係を構築する結果となる。
ピンポイントの出店エリアMAPを精査し、精査された資料よりピンポイントのターゲット(物件)を厳選する。
厳選された物件(全8物件)の所有者へ全て直接訪問し、強引ではあったがD企業の出店概要を説明する。
その結果、3ヶ処の物件所有者より「具体的な説明を聞きたい」との回答を受け、
その3ヶ処の物件情報をD企業へ送信する。
同日、D企業より3ヶ処全てに関し、出店したい旨の回答を受ける。
勿論、所有者側の「具体的な説明」及びD企業の「出店希望」のどちらも詳細は全く決まってはいない。
3ヶ処の物件概要は以下の通りである。
A物件 : 札幌市西区 Sub「琴似駅」 50M 現状 木造2階建延床70坪の空店舗 目的はリース店舗
B物件 : 札幌市南区 Sub「澄川駅」 20M 現状 更地(月極駐車場) 目的は定期借地物件
C物件 : 札幌市手稲区 JR「手稲駅」 50M 現状 更地(時間駐車場) 目的は定期借地物件
問題となったことは
A物件 : 構造が木造の為、現在の建築基準法に基づく耐火構造の対応及び消防法の対応。更には、木造2階部分の床耐久力。
B物件 : 札幌市内の地域戦略において本立地が次年度の出店デポと位置付けしている。よって出店迄の一年間の猶予が可能か否か。
C物件 : 定期借地が条件であるが、借地期間内に借地権者が契約を解除した場合のリスクヘッジを事前に掲示してほしい。
この結果
A物件 : 木造を耐火構造に変更する場合の工事費負担が多額であり、更に床荷量のUPなど難題が多い。
金処理及び賃料とのバランスなど過去の例において合意が難しく、検討中止も止むを得ない。
B物件 : 一年後に出店するか否かの判断をする物件となる。勿論、現状の判断では出店であるが、一年間押えることは出来ない。
B物件オーナーより「一年間待つのは構わないが、その期間内に他決若しくは翻意した場合は、当然諦めて頂きたい。」
A・B両物件とも出店のための長期戦略を検討することとなる。
短期的なターゲットをC物件に絞り込み、交渉を開始した。
GW連休明け、C物件の所有者C氏と2次面談を行う。
C氏より
①コイン式駐車場以外の別途利用計画はない。
②当該地は子供達へ資産として相続させたい。
③D企業の出店条件を確認したいが、当該地に関しては以下の通りである。(④~⑦)
④現状(駐車場)のままで何ら異存はない。
⑤新規の債務は負わない。
⑥売却はしない。
⑦賃貸する場合でも旧法(借地、借家)は除外する。
との条件を示される。
私(谷口)より
「ご提案申し上げたいのは、事業用定期借地です。借地期間は10年以上20年以内となり、期間満了時に更地にて明渡しされます。」と回答する。
C氏より
「現状の駐車場は、月額200,000円にて一括賃貸中です。それを踏まえて、D企業の条件をお聞かせ下さい。」
D企業へC氏との交渉結果をメール送信する。勿論、私(谷口)の主観を交えたC氏との合意内容を追記した。
3日後札幌市内某ホテル1階喫茶にて、D企業常務と合議する。
D企業側の希望条件として
①リースバック
②建物はRC2階建 延床100坪
③建物所有権はC氏
④建物賃料は月額1,200,000円
⑤建築費用80,000,000円 50%はC氏負担、残り50%は無利息にて貸付
として①~⑤提示されるも、私(谷口)より、
「C氏へ伝える事は無駄である。100%否定される。」と伝えるも、
「まずは話して戴きたい。その上でC氏の回答をお聞きし、善後策を検討したい。」
「解りました。C氏へ申し伝えます。C氏の回答は予想出来ますが、予想通りの回答が出た場合は、本件停止ということでしょうか。」と質問する。
D企業より
「C氏の回答をもって再検討したい。出店したい意思に変わりはないので、その時点にて定期借地を考える」翌日 C氏と3回目の面談を実施する。
前日のD企業との交渉内容は全く伝えず、定期借地権としての条件のみを詰める。
結果
①地代金月額300,000円以上
②借地期間 希望10年間
③敷金12ヶ月分
④保証金(敷金上乗せ)建物解体費相当額
とした。
D企業担当者と再度会い、以下の2点を伝える。
①C氏へリースバックを強くお願いしたが、丁重に断られた。
②やはり定借が条件となる。
D企業担当者より
「来週、常務(担当役員)が再来札するので、その時迄にて方針を決定したい。及びD企業側担当者とC氏の面談(挨拶)を行いたい」
「貴社(麗雅)への仲介料ですが、取引態様が借地という賃貸借ですが、土地1ヶ月分の賃料相当額が手数料相当額(300,000円程度)とした場合、余りにも少額となります。従いまして、事業用定期借地権は借地権の設定契約であり、物件の譲渡となります。賃貸借とは全く違うものであるため、別途協議させていただきます。」と伝えられる。
「常務と詳細は協議して頂きたい。仲介料も常務と合意して頂きたい。」
翌週、D企業常務と再打合せを実施し、事業用定期借地権に関し、D企業より
①自社(D企業)が借地権者にはならない。
②自社(D企業)は借家人となる。
③故に借地権者となる法人を設立する。
④主旨はSPCである。
スキームとしての問題点はないと伝え、枝葉部分の話合となるが、ここに感情を害する問題が待ち構えていた。
敷金上乗せ分(解体費相当額)に関し、主旨は、D企業の原因による契約期間満了前の契約解除の場合、SPC名義での空家建物が残るため、更地とならない、よって更地とするための解体費を預託して頂くということであったが、D企業常務より
「ということは、期間満了前に当社が倒産する可能性があるということか。」との問いかけに、「そうです。」と答えてしまっていた。
暫く無言の状態になってしまったが、双方ビジネスとしての姿を取り戻し、結果、D企業常務より、
「全て地主C氏の条件を承諾する。但し、仕組みはSPCが建物を所有し、地代を支払う。地代は希望額に+αを上乗せし、月額320,000円とする。敷金は、賃料×12ヶ月+解体費とする。当社は(D企業は)借家人となる。」
「仲介手数料に関しては、当初の借家人とした場合の賃料相当額120万円を仲介手数料としてお支払するが、社内において1ヶ月分賃料相当額の解釈もあり、何か大義名文はないだろうか。
「本件業務は宅建業ではなく、不動産コンサルティング業務です。従ってコンサルティング業務の報酬としてご請求させて頂きます」
これにより、本件仲介料は解決した。
翌日、C氏へD企業の最終回答を締結する。
C氏より快諾を戴き、H18年9月「事業用定期借地権設定契約に関する覚書」を締結した。
平成18年9月
契約解除
平成19年4月某日、コンサルティング事例報告2のY弁護士より、私の携帯へ電話が入る。
「総戸数10戸の賃貸アパートを管理して頂きたい。勿論貴社(貴殿)がアパート管理を行わない事は
承知しているが、近い将来、同アパートを売却するので、売却に伴う仲介を条件としてお願いしたい。」
Y弁護士との業務上の取引は、コンサルティング事例報告2、以外にも多数に及び、今回の依頼手順も、
大きな問題を抱えている様子がありありと伺え「Y先生からの頼み事は断れません。とりあえず詳しい説明をお聞きしたい。」
「今日中に本件詳細をメール送信する。内容を確認のうえ、返答を聞きたい。」
本件不動産の概要は以下の通りであった。
①1階 5戸 2階 5戸 計10室
②2階のA室にはアパートオーナーのT氏が居住
③2階のB室にはオーナーT氏の息子K氏が居住
④1階のC室(空室)以外は全て賃貸中である。
Y弁護士より『問題点は・・・』
①2階のB室に居住する、息子K氏の素行である。
②K氏が父親T氏の代理と称し、各賃借人より家賃を回収し自分の所得としている。
③家賃の支払を抵抗する賃借人へは恫喝まがいの言動にて、回収している。
④K氏本人は生活保護受給中である。
⑤K氏が1階C室も占有し、玄関ドアへ「K事務所」を掲げ何かの事業まがいなことを行っている。
⑥父親T氏の言う事は全く聞かない。
『オーナーT氏の意向として・・・』
①息子からの呪縛から逃れたい。
②同アパートを居抜きで売却したい。
③売却までの期間、家賃回収を含めた管理を業者へお願いしたい。
④1階C室からのK氏立退をY弁護士へお願いしたい。
『以上の事情であり、一度オーナーT氏と会って頂きたい。』
翌日、T氏及びT氏の娘夫婦(A夫婦)と面談する。
T氏との面談前に法務局、市役所、区役所、その他、諸官庁へ行き不動産概要を調査する。
インターネットを開き、本物件界隈の取り引き事例、成約事例を調査し、簡易査定を行う。
T氏と面談し事実関係を確認する。各賃借人の概要及び、契約条件を確認する。
さらには息子K氏の素行を詳しく教えて頂く。
アパート管理受託における契約書案文及び、アパート(土地建物)の査定額を提示する。
面談結果をY弁護士へ報告する。
2日後T氏より全て合意する旨の回答を受け、本件立退及び売買の各業務が開始される。
Y弁護士より、
①T氏の代理人として、各賃借人へ株式会社 麗雅が同アパートの管理会社となった事を通知する。
②K氏へは一階C室より退去を求める内容証明郵便を送達する。
以上の手続を実施した。
しかしこれが事件の始まりであった事は誰しもが、想像できなかった。
息子K氏からの呪縛から逃れる為オーナーT氏は、娘A夫婦の自宅近くへ引越しを行う。
その後(2週間後)Y弁護士より「息子K氏へ送達した内容証明郵便が受領されていない、恐らく居留守であろう・・・
よって、普通郵便で送達し到着時期にY弁護士自らが、K氏宅へ訪問し説明を行う」
時を同じくして2人の賃借人より「昨日深夜、息子K氏が突然来訪し、来月分の家賃を支払うよう要求された。息子K氏曰く
Y弁護士及び、株式会社 麗雅は何も関係ない。このアパートの管理者は自分であると言った。」
との連絡を受ける。
Y弁護士へ伝えY弁護士より息子K氏へ警告書を送付する。
しかし、その後も息子K氏の素行は悪化の一途を辿る。
息子K氏に関しては、
①話し合いでの解決は困難。
②不法占拠、家賃不払をなど、裁判所へ建物明渡しの法的手続きをとる。
③土地、建物の所有権も第三者移転し親子関係から第三者へ状況を変化させる。
④息子K氏の素行(悪事)を入居者より供述して頂き裁判において、有利な証拠とする。
これ以降五ヶ月の期間を費やし警察署、裁判所等々の手続きを経て、K氏の立退きが完了し正式な売買契約が成立する。
本件事例報告は、これ以上の詳細をご報告する事ができません。
一不動産の売買という結果に終わりましたが、その不動産を売買する過程において異常とも思える現実を経験しました。
・何も問題なく売買される不動産。
・異常な現実を経て、売買される不動産。
どちらも不動産業者の成功報酬は3%です。
しかし、業務内容は格段の差がございます。不動産コンサルティング業登録者の果たすべき役目は、ますます増えていく事でしょう。
平成19年11月
立退き
札幌市厚別区にその戸建は存在した。
今年1月、Y弁護士より電話が入る。
「戸建の査定及び、査定結果如何における売却をお願いしたい。」
数日後、Y弁護士事務所へ伺う。
事務所には、茨城県に在住する戸建オーナーのM氏が同席していた。
「実は、こちらのM氏は6年前に転勤で茨城へ転居した。その時にこの厚別の自宅を賃貸とした」
「賃貸手続(仲介)は、大手の不動産業者へ依頼し、入居者を斡旋して頂いた。」
「入居者は、父親が経営する土建会社に勤務していた若夫婦で、障害のある幼児が1人の3人家族であった。」
「しかし、昨年の年初から家賃の支払いが滞りだし、最初のうちは電話連絡に伴う家賃の督促に応じていたが一向に家賃の入金がなく、半年前位からは自宅の固定電話更には、夫婦双方の携帯電話にも応答しない状況となった。」
・月額賃料10万円
・M氏の転勤先は、中小の食品会社
・今後、M氏の札幌転勤は不明
・賃借人の保証人は父親(現在70歳 居住地は不明)
「茨城在住であり、交渉方法は電話連絡に頼っていたが、応答されない状況に困り果て、法律相談センターを介して当事務所にお越しになられた。」
「M氏のお考えは、当事者同士の交渉はあきらめ、法的手続きを行う旨の通知を弁護士を経由して賃借人に伝え、未払い賃料の回収及び立ち退きを行わせたい。」
「立ち退き完了後は、このような経緯もあったので賃貸の継承はせず、売却を行いたい。」
「家賃不払いが1年以上継続していることから、公共料金の支払いも想定され、更には室内も荒れ果てているのではないかと推測される。」
「貴社(麗雅)にお願いしたいことは、売却に伴う仲介を条件として、現状の査定・外観の状況から室内の状況把握・公共料金の延滞状況を把握していただきたい。」
現地へ行き、賃借人の生活状況を確認する。
居住していることは間違いないが、息を潜めて生活している様子が感じられた。
Y弁護士からの電話連絡は、最初の1回のみ応答するが2回目からは全く不通となってしまった。
内容証明郵便更には、法的手続きに進む旨の通知を行うも賃借人からの連絡はなかった。
Y弁護士・M氏との協議の結果
・ 賃借人に対する家賃支払い及び立ち退きの裁判申し立てを行う。
・ 保証人を探し出し、債務履行を要求する。
こととした。
特別送達のて裁判所から書類を差出てから約2ヶ月後、Y弁護士へも何らの連絡もなく、気になったY弁護士が現地へ行くと、その戸建てには誰も住んではいなかった。
隣戸へ確認すると「1ヶ月ほど前に引越ししたようですよ。」といった話を聞き、俗に言う「夜逃げ」であった。
賃貸借継続中であり、裁判申し立て中であるが、諸手続きを踏み、室内を確認することにした。
合鍵を茨城から郵送していただき、関係者立会いの下、玄関ドアを開錠しようとしたところ、
何と鍵穴が壊されていた。
卑劣というべきか、人間社会の風上にも置けないといった憤りを感じる。
鍵開錠業者へ連絡し、玄関ドアを開錠する。
室内は想像以上に荒れ果てていた。
玄関には、督促通知書が数多くあり、何と検察庁からの支払命令書までもがおかれていた。
その後、保証人である父親の所在が判明し、Y弁護士が面談を行った。
・ 息子達夫婦の所在はわからない。
・ 数ヶ月前から自分達へも金の無心に来ていた。
・ 経営していた土建会社は倒産し、今は年金生活である。
・ 当然償わなければならないが、自分たちも生活するだけで限界である。
といった状況であった。
相変わらず、賃借人夫婦の行方はわからない状況であった。
賃借人不在での裁判のため、判決確定に支障はなく時間を待つだけの状況であったが、荒れた室内を放置したままであり、賃貸借契約が存在するために、売却手続きが出来ない状況であった。
然しながら、建物は生きている状態であり、空室のまま放置することは劣化の進行を早めてしまう。
更には、残置された動産からの異臭・カビなどが建物を汚染させてしまう状況であった。
M氏・Y弁護士と協議し、賃貸借契約の解除に影響させず、裁判の判決にも影響しない手法により、動産類の撤去及び、室内の清掃を実施した。
同時に、売却の広告をインターネット上へ告知し、将来の見込み顧客を収集した。
早速、見込み客が発生するも、現状案内できる室内状況でなく、M氏と再協議を行い、賃貸借契約解除前であるが、最低限のリフォーム工事を実施することにした。
リフォーム業者2社を選定し、フルリフォームの見積もりを依頼する。
結果、A社400万円・B社350万円の工事代金が提出される。必要工事の見解相違もあり、2社ともほぼ共通の結果であった。
同時にリフォーム後の販売価格を再査定し、上限価格は2,000万円と判断した。
その結果、リフォーム代金は上限200万円となり、フルリフォームから販売上必要なリフォームを抽出し、更には見積もりを精査のうえ、200万円の工事費にてA社へ発注することとした。
M氏へ本件報告し了承の上、工事を実施することとした。
同時にY弁護士へ報告し、賃貸借契約解除に伴う裁判に、本件リフォーム代金が損害金である旨の内容を追記した。
1ヵ月後、リフォーム終了の建物をロケし、充分な満足感と共に充分売却可能であることの確信を得た。
リフォーム完了物件としてのチラシを作成し、インターネットへの再掲載・業界への情報公開を行い、オープンハウス(公開住宅)の準備を進めた。
秋風近づく頃、土日曜日の2日間、公開住宅を実施し、7組の来場客があり内3組より好評を得た。
M氏・Y弁護士への報告及び了解の下、来場客1組と売買に関し合意した。
早速、ローン手続きに必要な書類の準備に入った。
しかし、賃借人不存在における賃貸者契約解除の判決を待たなければならないため、作業は同時進行となった。
降雪が目立ち始めた頃、引渡し時期も迫り、判決を待つだけとなっていたとき思いがけない事態が発生した。
何と賃借人の所在が判明したのである。
Y弁護士・M氏と協議を行い、最優先課題として賃借人と面談し、
1.賃貸借契約の解除
2.不払い賃料、修繕費の解決
以上の話し合いを行うこととした。
ただ誰しもが、スムーズな面談がなされるとは思ってもいなかった。
当然資力も無く、弁護士へ依頼しているM氏側からの接触ゆえ、かなり構えた対応をとられると予想した。
数日後、Y弁護士が判明した自宅へ訪問する。電気メーターの稼動状況より室内に居ることは間違いないと推測するも不応答であった。
その後、当社担当者が訪問したが、同様の結果であった。
このままだと賃借人の別居場所が判明しているため、賃借人不存在としての賃貸借契約解除手続きに支障をきたす恐れが発生することとなった。
ここで不動産業務を営むものの第6感が働いた。
・ 居留守を使っている。
・ 債務超過の賃借人である。
・ 子供は障害者である。
・ 男性の単独訪問に不応答である。
多分、夫人は常に在宅しており、ひっそりと隠蔽された生活を送っていると推測した。
翌日、当社の女性事務員を同行し自然体にて転居先へ訪問した。
玄関前駐車場を散策もどきにて佇んでいると、玄関ドアが開き「何か用ですか。」と声を掛けられる。
女性事務員の存在が警戒心を解いたと判断した。
賃借人の夫人であることを確認し、過去の問題点・現状・今後の手続きを説明する。
賃借人本人が不在であったため、即日の合意は出来なかったが、今後の手続き要領・日程・場所を取り決めすることができた。
携行していた解除合意書を渡し、時間面談時までに押印しておいていただくことも合意した。
4日後、押印された賃貸借契約解除合意書を受け取り、本物件売買における足枷が外れた。
その後、本件売買が締結されたことは当然の結果であった。
しかし処理未了の債権債務は長らく続くのであろう。
平成20年10月
債権者交渉
15年前、イタリア・フランスへビジネス渡航する。
イタリア サンタマリア教会「最後の晩餐」、フランス ルーブル「ミロのビーナス」など
歴史的芸術もさることながら、凱旋門からのパリの街並み更には、街並みを構成する調和された建造物が残像として消え去らない。
本コンサル報告は、その残像を鮮明に思い出させてくれる事例となった。
札幌市中央区 札幌市民であれば一度は訪れる名所文化施設の正面にその建物は存在した。
夏の名残り漂う9月、私のクライアントより連絡を受ける。
そのクライアントとは25年間の付き合いであり、原因は不動産取引であったがその後は友人関係以外の何物でもなかった。
クライアントの本業は、スポーツ大会にとって、なくてはならない大会業務の隠れた存在企業であった。
私はこの数年、そのスポーツ大会にスポンサーを張り付ける代理業を代行していたが、昨今の景況下、実績の上がらない結果がついて回っていた。
クライアントからの話は、「自宅を転居する。転居先の物色をお願いしたい。自分のイメージする物件が既に建っているので、その物件を調査・査定していただきたい。」との連絡であった。
依頼された物件は当社(私)と取引のあるディベロッパーの高級分譲マンションであった。
中央区の高級住宅街に位置し、瀟洒な建物(邸宅)が優雅に配置された住宅街に、そのマンションは存在した。
1種低層の用途地域ゆえ、3階建てのマンションであり空地の開放感が落ち着きを醸し出していた。
しかし、住人の存在感が無く、空虚な第一印象を受けた。
理由は明白であり、総戸数の半分が未販売であった。
原因は、価格・間取・仕様・意匠・グレード・設備など列挙すれば切が無いが決定的な原因は、居室からのロケーションと断定した。
坪単価200万円超の物件に比し、この坪単価の購買層を応諾させるには、このロケーションでは不可能であった。
売主のディベロッパーも気付いていて、「勿論、諸条件を提示します。」と伝えられた。
翌日、クライアントへ調査ロケ結果を報告し、その上で同行ロケを行った。
結果、同マンションの3階最上階、東南角住戸を▲20%+展示家具一式提供を提示した。
翌々日、ディベロッパーより▲10%の回答を受け、交渉する気持ちも起こらず購入を見送った。(その10日後、▲20%+αの条件応諾回答となるが、覆水は返らなかった。)
クライアントの意匠性・文化・イメージ(単純には好み)を理解し、物件調査を開始した。
一週間後、頭書のヨーロッパでの残像を思い出させる建物(マンション)にめぐり合う。
その建物は、10年前に当社が管理業務コンサルタントを行い、管理収支の見直しを行い管理会社を変更させたマンションであった。
その効果もあり、築20年を迎えるマンションであるが、エントランスから建物入り口までのアプローチ・外構の整備・樹木の剪定など、
自然とのバランスも申し分なく、クライアントの驚嘆の声が聞こえてきそうな雰囲気であった。
問題は売却物件があるか否かであったが、偶然にも最上階(5階部分)の南西角住戸(専有30坪)が、事故物件として空室状態であった。
事故内容は、
1.現所有者は5年前に、その前の所有者より所有権を取得していた。
2.しかし、その取得自由は転売目的であり、所得価格は安価のようであったが、不良債権を継承していた。
3.不良債権は、管理組合への管理費の滞納(≒200万円)であった。
4.転売のための公開を行うが、奇しくも景気後退の影響を受け思うような商談が入らなかった。
5.現所有者も、5年前に取得してから管理費の延滞を続け、現在では総額≒700万円へ膨らんでいた。
6.更には、固定資産税も滞納(≒300万円)も判明した。
7.取得時に融資を受けていた金融機関へは、元本(根抵当額1,000万円)を据え置き、金利のみ返済しているとのこと であった。
8.結果、債権者3者の表面上の総額は、2,000万円となっていた。
債権者3者へヒアリングを行い、総額2,000万円を上限として、現状事故物件ではあるが、取得が可能なことを確認した。
大筋をクライアントへ報告し、まずは物件ロケを行った。
予想通りの結果となったことは言うまでもなく、予想を上回る賛辞を頂く。
「日本の建築物は耐久消費財であり、西欧諸国の建造物とは正反対である。20年も経過すると、劣化が顕著に現れ、老朽化の進行は
止められなくなってしまう。しかし、このマンションはどの様な維持管理をされてきたのか、築年数の経過が逆に存在感を高めている。」
クライアントより、債権総額2,000万円-αの宿題を要求され、購入を前提とした交渉を開始することとなった。
クライアントとの永年の付き合いもあり、リフォーム後の総額は2,500万円と読む。
同時に、空室住戸のリフォーム見積もりに着手した。
債権者側との交渉
・第一順位 金融機関
「金利の支払いをしていただいているので、不良債権化していない。所有者が売却を行うのであれば、元本全額返していただく。元本は当初のまま1,000万円である。」
・第2順位 役所
「延滞利息も付いているが、まずは本税を回収したい。一部の債権放棄も考慮するが、原 則、他の債権者が債権放棄した場合であり、その場合でも同比率である。」
・第3順位 管理組合
「総額700万円のうち、半額は何とかお願いしたい。」
第1次交渉の結果は以下の通りであった。
第1順位 元本1,000万円 (減免不可)
第2順位 本税300万円 (+αの延滞税200万円は減免了承)
第3順位 管理費等350万円 (延滞総額700万円の内▲50%放棄)
総額 1,650万円となった。
同時にリフォーム見積もりを算定し、フルリフォームの場合は900万円となった。
総合計 2,550万円(1,650万円+900万円)
今後の課題は、目標金額2,000万円-αに対し、オーバー分(▲550万円)の圧縮となった。
第1圧縮 リフォーム
周知の高級マンションであり、魅せるためのグレードを維持したリフォームは不可欠であった。
結果、上限500万円にてリフォームを行うことが可能となった。
クライアントへリフォーム内容を説明し、軽微な変更及び追加工事が加わり、総額550万円のリフォーム工事を行うことで合意した。
圧縮額 ▲350万円
第2圧縮 各債権者
第1順位の抵当権は事実、不良債権化していなかったことが判明する。
更には、別の意味で有名なノンバンクであり、元本1,000万円からの減免は不可能と判断した。
第3順位の管理組合へは、現所有者が所有し続ければ益々延滞金が増加することを理解していただき、当方側からの提案として、
更なる減額を了承していただければ、可能な最短日程にて所有権の移転を約束する。
当方側の要求は▲70%(▲500万円)の放棄をお願いした。
管理組合理事長より臨時理事会を開催する旨の回答を得た。
第2順位の役所へは、第1順位の抵当権が不良債権化していないことを伝えた上で、第3順位の管理組合が▲70%の減免を応諾する予定であることを伝え、
同様に本税も▲70%(▲200万円)の減免を申し伝える。
一週間後、第2順位(役所)より、▲70%(▲200万円)の減免回答を得る。
更に一週間後、第3順位(管理組合)より、▲450万円を放棄する理事会決議の報告を受ける。
しかし、債権放棄は総会での決議事項のため、理事会議事録を作成していただき、クライアントへは理事会の決議にて本件進めることでの了承を得た。
この結果、各債権者への分配金は以下の通りとなった。
第1順位 1,000万円
第2順位 100万円
第3順位 250万円
合計 1,350万円となった。
リフォーム代金(550万円)を加算し、総額1,900万円となる。
金額に関する了承は得るものの、クライアントより更なる要求が出される。
「年内に引越しをしたい。」(今日は11月20日であった。)
リフォームのパーツ発注・納品、リフォーム工事に概算1ヶ月である。
更には、リフォーム着手は本物件取得後が条件である。
しかし、これを理解しての要求であり、早速スケジュール調整を行う。
勿論、所有権移転のための債権者との合意が最重要課題であった。
司法書士との打合せを行い、各債権者との問題は解決となった。
リフォーム工事に関しては、3週間強(25日間)まで短縮できることが判明した。
クライアントへの報告を行い、クライアントより、
「充分満足した。その日程にて全てをすすめていただきたい。本件業務に伴う貴社への手数料を取り決めたい。」との回答質問を受け、「お任せします。」と回答した。
12月初某日
本物件の債権者他関係者11名が会し本物件の売買契約が締結された。
勿論付着権利は全て排除された。
翌日、クライアントの充分満足した尊顔を拝見し、不動産コンサルタント報酬としての手数料が授受された。
平成21年10月
特殊な不動産売買
ニセコ町、その中でも世界的に有名なそのスキー場の麓にその不動産は存在した。
その所有者のS氏とは、札幌市内に存する別のS氏所有不動産を通して知り合わせて頂いた。
本コンサル事例は、その札幌市の不動産売買に関する報告であるが、まずは先にこのニセコを紹介したい。
12月初旬、純白ゲレンデのオープン間もない頃にニセコへ商談来訪した。
20年振りのニセコであったが、その変貌振りに絶句する。
メディア・その他の評判において、ニセコの変貌は聞いていたが、3次元を目の当たりにし、痛烈なカルチャーショックを受けてしまった。
以前はログハウス風のコテージが存在し、自然との調和がそれなりに取れていた記憶であったが、
今はリゾート風コンドミニアムが複数棟建設され、ロードサイドにはペンション風コテージと商業施設が混在していた。
何よりも驚いたのは北海道ニセコ町でありながら人種が違っていた。
シーズン前であるにも拘らず、町の繁華性・活気・人並みなど、経済が活発に動いていることが充分感じ取れた。
【REAL ESTATE】の看板に引き付けられ地元の不動産会社を訪問する。
社長は外国人であった。日本人スタッフと会談する。
3ヶ国語の語学力は必須
且つ、文化・経済に精通していること
不動産売買は99%が投資
日本人が入り込む隙間は殆ど考えられない
次元までもが違っていた。
ちなみに一昨日成立した取引は売買価格が数億円とのことであった。
山の素晴らしさは、山頂からの大自然のロケーション・バラエティ豊かな滑走コース・上質のパウダースノー・行き届いたゲレンデ整備、そして温泉と食材である。
夏山としてのリゾートも特筆するまでもなく、文句のつけどころないリゾート地であった。ビジネスの根源はアイディアなのであろう。
さて本題である。
札幌市某区の純粋といえるセレブ地区にその不動産は存在した。所有者は、前述のS氏である。
私の知人社長から、本件主人公のE社長のご紹介を受ける。
E社長のご本業は、プラスティックの特殊加工業を営んでいた。
(企業家に共通すること、「不動産が好きだ」という点があげられる。)
9月に入り、E社長と面談する。世間話の端々に不動産が紛れ込む。
中略
1ヵ月後、
そのS氏所有の不動産をE社長が購入することとして、私がその業務を請け負うこととなる。
不動産の概要は以下の通りである。
土地90坪(評価額 坪60万円)
建物 S造2階建(耐火建物)築8年 空家
1階 店舗(レトロな洋館風)
2階 応接兼宿泊施設
延床 100坪
外壁 古代ローマ風の仕様
駐車場 4台分
建物時価額 5千万円
早速S氏と面談する。
その不動産の歴史をお聞きする。
新築当時に店舗をレトロなレストランとして開業する。
瞬く間に、メディアを通して大繁盛店へ変貌する。
スタッフは、経歴豊かな料理長1名と見習い1名
ホールはS氏夫人が担当し、接待はS氏本人が行っていた。
昼食時は、運転手付き高級車が常時待機していた。
顧客はS氏へお任せの注文を行うありさまであった。
仕入れ食材がなくなり、ディナー営業を中止する事態が頻発した。
全国ネットの広報誌から記事掲載の依頼を受ける。
多忙に次ぐ多忙により短期間にて営業を停止する。
現在空家となっている理由が判明する。
その理由を本書へ記載することはできないが、かくも凄い施設が存在していたことは事実であった。
空家のまま放置した場合の建物の劣化は、急速に侵攻する癌の如しであるが、その不動産には当て嵌まらなかった。
設計及び施工の良質さが証明される。良質さの精度は、その店舗へVIPが頻繁に出入りしたことで証明されていた。
そのような不動産ゆえ、過去何度も売買・賃貸の話が舞い込むが、成約には至っていなかった。何故なのか。
S氏と売買条件の詰めに入る。
まずは売り先への条件が提示される。
それは、「その不動産を愛せる方へ譲渡する。愛のある利用が条件である。」
戸惑う素振りも見せず応諾する。
その他の条件が提示される。
購入を希望する買主の条件との乖離を伝え、条件合意のための時間を戴く。
未決条件は価格であったが、暗黙の未決にて合意した。
同時にE社長への内覧許可を戴く。
その不動産全てを実査し、その不動産に関わる法その他の概要を調査する。
E社長への報告書をまとめると同時に、その不動産の査定を行う。
売買としての現状査定額は8,000万円となった。
翌日E社長と面談し、一連の確認事項を淡々と報告した。
推測を交え、不動産の凄さもあるがS氏とお知り合いになれることの凄さを付け加えた。
E社長からも全く同感である旨の賛同を得た。
1週間後、E社長・E社長の顧問と内覧を行う。
内覧ののち、S氏ご自宅へお伺いしS氏ご夫人・ご家族とお会いさせていただく。
S氏ご家族は当然のS氏ご家族であった。
煎茶をご馳走になり、ニセコ町での経緯をお聞きした。
小一時間の歓談の後散会した。
結論は、S氏とお知り合いになれることの凄さに行き着いた。
仲人が不動産ゆえの功徳である。
弁護士において双方代理は存在しない。
不動産取引において、両手と言われる双方代理は業者の望むとこであるが、駆け引きが存在した場合及び、需要と供給以外の場合は、双方代理は破談となりやすい。破談を免れても後味の悪い結末が待っている場合が多い。
しかし、本件取引は後者の例であったが双方代理ゆえに成約した稀な実例と思われる。
売買を前提とした交渉に入る。
特殊な不動産ゆえ、利用形態も特殊となる。
長期間空室のまま維持されていることから、S氏の売買条件は変わらないものと推察した。
問題は、その他の第三者が購入する意思表示をするか否かであったが、その予感が的中した。
S氏へ他の業者より、「中国茶の販売店が、珈琲店とのコラボにて、当該物件の2階を利用したい。」との申し入れが入った。
希望は賃貸であったが、売買でも構わない。という内容であった。
S氏より、「E社長の話が先ゆえ、先に決めていただきたい。それ如何により中国茶の方との交渉に入る。」
1週間後、融資決定とはなっていなかったが、E社長の会社メインバンクの支店長より、「融資は大丈夫だ。購入しなさい。」との言葉を信じ、買い付け証明を作成した。
勿論、査定額の8,000万円とした。
翌日、S氏と面談し同証明書を提示した。
S氏満面の笑みとともに、▲200万円の7,800万円の売り渡し回答を戴いた。
12月、売買契約が締結された。
しかし、これがドラマの始まりであった。
クリスマス当日、E社長より「融資不承認となった。」という一通のメールが入る。
数時間後面談し、
メインバンク支店長の先走り。
本部の審査において、融資対象外の不動産と認定される。
E社長企業への融資であれば、承認される可能性大。
個人融資の場合、否住宅・否事業であり、どの条件にも当て嵌まらない。
詭弁とも聞こえる銀行側の言い訳であった。
しかし不承認の事実は覆らなかった。
S氏へは事情秘匿のまま、他行へ打診した。
しかし年末も押し迫り、各行とも「年明けの審査となる。更には難しい案件である。」と言われる。
ブルーな気分のまま、年末年始を迎える。
年明け、S氏も微妙な空気を感じたのか進行状況の確認が入る。
E社長の強い意志の下、メインバンクのローン不承認であったが、本件は他の金融機関からの融資を模索し、契約の中断・中止はなく必ず履行する旨をS氏へ伝える。
S氏より、「状況は判ったが、やはり契約の中止はありえる。その場合はどうするのか。」と詰問される。
「契約の中止は考えていない。よって中止した場合のことは全く考えていない。」と伝える。
数日後、都銀のT銀行より前向きな審査取り組みの報告を受ける。
地元のH信金は、信金として取り扱いできる上限を超過しているとの回答となる。
サブバンクのY銀行が、E社長の企業への融資が可能であれば前向きに検討することとなる。
履行期日の一週間前、都銀のT銀行より条件付承認が入る。
融資期日7日以内。
融資額は売買価格の80%
金利は4.6%
レートはしかたないが、20%の自己資金が問題であった。
S氏へ報告すると、
他行の状況が不明であれば、T銀行の融資を受けて頂きたい。
自己資金20%は貸付する。
よって、本件をすすめてほしい。
と伝えられる。
E社長へ上記伝えるも、「サブバンクのY銀行の回答を待ちたい。」
しかし、都銀のT銀行の融資期日と本件履行期日が奇しくも同一であり、Y銀行の判断が同日までに出るか否かは微妙な状態であった。
万一Y銀行の融資承認が下りても、履行期日までに実行されることはもはや不可能であった。
よって、S氏へ期日延期の変更契約を申し入れ、2週間延長した変更契約を締結した。
但し、ペナルティ条項が大幅に追加された。
本来の決済期日が到来する。しかしY銀行からの最終回答はまだであった。
同時に、都銀のT銀行は、「融資の辞退届けを提出していただく。再度申込をされても、融資されるか否かは判らない。」と回答される。
E社長は、「ギャンブルとなるがT銀行は諦める。」と決断された。
仲介担当の私も、万一の場合は相当のペナルティが課せられることとなった。
2日後、Y銀行より以下の条件付承認が出る。
融資額は売買価格。
諸費用などは自己資金。
法人の短期・長期の借入金を逐次移譲する。
レートは2.98%。
金消契約を締結し、融資承認から1週間後、資金実行となる。
3者一様に概ね1ヶ月ぶりの笑顔となった。
映画「AVATAR」の結末に似ていた。
平成22年2月
解散企業の不動産売買
札幌市のベッドタウンであるその町に、役目を終了する法人(以降、N社とする。)が存在した。
N社は、札幌オリンピック当時に建設されたその町の公営住宅に、暖房のみを供給する目的だけで設立された半官半民の株式会社である。
40年の歳月は、公営住宅の老朽化と戸別対応の熱源変更、更にはN社の施設(ボイラー設備・配管)のアスベスト問題も重なり、必然としての業務終了であり、結果として解散へと向かっていた。
今年の年初、その事情を聞くのと同時に、N社が所有する不動産の概要を聞く。
所有する不動産は一ヶ所
施設は事務所・倉庫及び、居宅1,000戸相当に暖房を供給する為の大型重油ボイラー
敷地は約900坪
今年3月に解体工事着手
4月末日解体工事完了
5月末日までに債権債務処理及び、動産不動産の売却完了
6月末日解散
解体工事の入札は既に終わり、元請は大手ゼネコンのZ社が担当していた。
H社長と私(谷口)は、20年来の友人である。
今年3月、H社長より連絡が入る。
「N社の不動産売却を急がなくてはならない。」
不動産の概要は以下の通りである。
敷地面積 3,000㎡(900坪)
用途地域 1種住居地域
建物 事務所倉庫(RC2階)、地下重油タンク、A重油大型ボイラー、煙突他
地勢 高低差10Mの東西背面道路、不整形地(台形)
環境 ・戸建住宅と公営住宅だけの住宅地区、アパート・マンションはない。
・JR駅650M 徒歩9分
・金融、郵便局、病院、スーパーなど全て徒歩圏
話を聞いたときの私の所感は、不動産売買に不安要素はない、価格次第で必ず売れる、多分、買受が殺到する、私の出る幕はない。であった。
しかし現実は全く手が挙がらず、土地を見た方の印象は、
北側に向かって傾斜しているため、午後になると暗い。
背面道路のため土地が2分される。
築40年の古く汚れている公営住宅が隣接しているため、イメージが悪い。
JR駅及び利便施設が全て徒歩圏であるという認識と、営利目的にならない不動産価格が、素人目線を隅に追いやり、結果として売買不調に至っていた。
売買が不調な場合、解散スケジュールが決まっているため、強制的な圧力が発生し、強引な所有権の移転が要求される。
当然、元請のゼネコンZ社にお鉢が回る。
Z社も工事の受注に対し、バーターの不動産購入など出来るはずも無く、その圧力は下請けに注がれる。
下請けのH社は工事の受注額も多く、結果として私の友人であるH社長へ回りまわって来たのである。
しかしH社も同様に、不動産を購入できず、私の元にどう段が入る。
H社長の依頼を断れるはずも無く、即日業務に着手した。
取引事例・公示地・路線価の調査。
敷地900坪の利用方法の検討。
結果
① 900坪を一枚宅地としての全体利用
商業系(物販・飲食ほか)は近隣に充実しているため不可
共同住宅系は容積率を消化した場合、規模が大きくなりすぎ消化不能
1枚宅地としての利用検討は先送りとした。
900坪を宅地造成する。
台形地のため、東側道路面2宅地・西側道路面5宅地への分割が可能
1区画が平均100坪の市場である。
市場価格は坪あたり100,000円。
坪@80,000円であれば、2ヶ月以内にて充分販売可能
結果として宅地造成を前提に、本物件を売り出すこととして結論付けた。
土地価格の査定を行い、H社長と事前打ち合わせを行う。
宅地造成後は上記の通り坪当たり80,000円とし、造成前の素地価格を総額3,200万円、坪当たり35,000円とした。
その後、法務局・役所・その他官公庁へいき不動産重要事項を調査する。
ここで、大問題が発生する。
5宅地側の西側道路(幅員12M公道)に、上下水道管が敷設されていなかったのである。
今まではN社1施設だけであったため東側道路に敷設されていた上下水道管で充分であった。
西側道路への上下水道管敷設は、延長100Mの道路掘削と敷設工事であった。
しかも上下水道管の敷設工事は行政へ帰属させる公共工事であり、工事費用も相当な額となってしまう。
既に解体工事も50%以上進捗し、売買も猶予が無い状況であった。
N社、Z社、H社、当社との4社協議を行う。
調査結果・査定額・問題点をテーブルに広げ、方向性と可能性を伝える。
宅地造成が最も足が早いとの結論となるが、上下水道管が敷設されていないという不動産は瑕疵以前の欠陥である旨伝える。
問題は上下水道本管引き込みのための工事費の捻出であった。
N社は、道庁及び行政と民間2社が出資した法人であり、既に解散時期も確定している会社のため、新たな工事費の捻出が出来ない。
元請のZ社も解体工事以外の工事を行う予算が無い。
結果として、売却代金からの捻出となるが、解散会社のために売買代金から支出することが仕組み上、かなり難しい問題であった。
そこで以下の結論を導き出す。
株式会社 麗雅を実際であり事実上の不動産コンサルタント会社とする。
株式会社 麗雅より査定額(素地価格)で本件不動産情報を市場へ公開する。
更に指値の甘受を匂わし、買主を探す。
買主発生後、希望額から上下水道敷設工事代金を控除する。
控除した金額を本件土地代金として位置づける。
本件土地代金をN社の社内外へ事前根回しを行い、内諾を得る。
控除された上下水道工事代金を株式会社 麗雅は、不動産コンサルタント業務として買主より請け負う。
買主は、希望額が土地代金とコンサルティング代金に分割されることとなるが、勿論同額である。分割交渉は株式会社 麗雅が請け負う。
コンサルティング代金の一部をH社に実際の上下水道敷設工事費として発注する。
4社全てが合意し、本件不動産コンサルティング業務が開始となる。
不動産コンサルティング業務の請負代金を○○○万円とした。本件工事代金はその50%で合意した。勿論その50%の工事代金でH社のH社長も満足であった。
1ヶ月の販売期間が経過する。
現地案内、現地ロケが10社を超え全て見送られた。
見送り理由は前段のロケ第1印象が原因であった。
12社目、事前に作図した宅地造成図面を説明し、宅地造成に伴う事業計画及び事業収支を提示した。強調したのはエンドユーザー目線であった。
その日の夕方、3,200万円の査定額に対し、3,000万円の買付申込書を受け取る。
翌日、3,000万円を分割して頂く為に、申し込み企業の社長と面談し、誠意を持って説明しご理解を頂いた。
事前協議の結果が功を奏し、分割した新買付申込書を頂き、不動産コンサルティング業務の請負も合意して頂く。
翌日、N社へH社長と訪問し、N社の代表精算人から満面の笑みのもと基本合意を頂く。
N社代表精算人が、所轄行政その他関係各所へ行かれ根回しが開始される。
勿論、覆ることはあり得なく結果を待つだけとなる。
3日後、全てが整う。
後日、不動産売買契約と不動産コンサルティング契約が同時に締結される。
平成23年4月
「地中埋設物」が存在したことにおける戸建売買でのトラブル事例
【不動産概要】
【売買結果】
結果、平成24年3月、所有者より売却依頼を受け、同年9月、当社顧客へ売却。
引渡しまでに6ヶ月間の期間を要する。
当社顧客の購入目的は別荘であった。
【売買での問題点】
売買物件土地の地中にコンクリート管が埋設されていた。
現所有者が土地を取得(昭和44年)する以前から存在し、当時は幸いとばかりにその地中管へ地表面に溜まった雨水・融雪水の排水のための枡を設置し、管と接続した。
勿論、土地に存する瑕疵であり、今般の買主より、「買受条件は管の全部撤去及び、撤去後の地盤強度の維持」となり、現所有者もその条件を応諾し停止条件つき契約を締結した。
【調査】
埋設されている管の所有者及び使用者
当時の管の敷設目的及び敷設範囲
撤去の可能性及び撤去後の地盤強度維持
【簡易調査結果】
巨大な排水管(直径700~800Φ)が広域に存在した。管底部の深度は2Mであった。
使用されている痕跡は無く、所有者・設置者を証明するプレート・刻印などもなし。
明らかに河川敷地へ排水されていた巨大管であったが管の起点が不明。
昭和44年以前に敷設設置された管であり、民間が設置したものとは考えられなかった。
【各役所での調査】
【役所調査結果】
全ての役所において当該管の設置・敷設の記録はなく、当然、道路台帳・河川図面・上水道竣工図面・下水道竣工図面などにもこの巨大管の存在痕跡は発見されなかった。
しかし管径700Φのコンクリート管であり且つ40年以上前の敷設管である。
河川に突き出している管を見る限り、ヒューム管(鉄筋コンクリート管)と推察され、当時では大変高価な管である。現在価値に換算すると、数千万円の設置工事に匹敵する代物である。常識的に考えるまでも無く、当時、必要な所轄官庁が敷設したものであろう。
この常識論をそれぞれの役所へ伝え、河川に突き出している実物を、各役所にロケさせる。
ロケ結果、各役所とも大前提として自分達が敷設設置した管ではないと断言するが、余りの巨大さに、民間が敷設設置する代物とは思えないとの非公式見解を述べる。
売買成就のために、道路と敷地の境界部分を掘削する。掘削費用は現土地所有者の負担にて行う。
掘削した結果、予想通りの位置(範囲)及び深度に管を発見し同時に、使用されていない管であることも確認された。
その場で管に穴を開け内部を確認した結果、道路(国道)内部へかなりの距離で延伸しており、起点は道路若しくは対面の土地であることが確認された。
道路管理者へ、報告を上げる。
道路管理者より、「再掘削をお願いしたい。管内へファイバースコープを入れ、内部を調査したい。」
再掘削の結果、管内部へファイバースコープを入れ、内部映像を地上で見る。
道路内部4分の3程度進んだところで管は破壊され土砂で埋められていた。
同時に対面の土地も掘削するが、対面の地中からは何も出てこなかった。
結論は、道路面下部を起点とした直径700Φの排水管が、本件敷地を経由し、河川敷地へ排水されているという事実が確認された。
果してこの事実が今後どのように展開するのか。
数日後、道路管理者より非公式見解として、
起点が道路下部であることは周知の通り。
しかし、道路を築造若しくは道路を維持するために設置された管ではない。
発見はされなかったが、道路も横断されていた管と推測される。
しかし、対面の特定行政庁からも管の敷設設置の痕跡・記録などは一切発見されない。
非公式であるが、従前の見解と何らの変化はない。
但し、道路下部であり、道路の地盤強度も不明なため、決定ではないが、道路掘削を行い、埋設管を撤去したいと考えている。
当社の知り合い弁護士2名へ確認する。
A弁護士
B弁護士
常識として特定行政庁が敷設設置した管であろう。
1年先か2年先か若しくは更に時間がかかるかもしれないが、事実を判明させることは出来るだろう。
よって、この管を設置した官庁へ撤去させ、原状回復を求めることが出来る。
しかし、判明するまでは土地は現状のままとなる。
一瞬、B弁護士に魅力を感じたが何年後かわからない決着を待つことが出来ない。
理不尽さを感じ更には官庁お得意の隠蔽かとも疑ってしまうが、結果は明白である。
本事例の結論は、
K氏の負担と責任で、敷地内に埋設されていた管を撤去し、管が存在していたことで地盤強度が劣化した範囲を補強負担することとなる。
負担金総額は数十万円程となり、現所有者が負担することとなった。
同時に、道路(国道)下部の埋設管は道路管理者が、河川側に埋設及び露出している管は河川管理者が撤去することとなった。
賃借人立退
2006年、当社クライアントのP氏へ札幌市某区の中古マンション(Gマンション)を購入して頂く。目的は資産価値としての物件購入と、投資利回りの魅力さであった。
購入者のP氏とは、2004年の従前のご自宅の売却及び、現在のご自宅の購入、更にはP氏姉夫婦所有の不動産売買など、不動産取引に関する一切の業務を任せて頂いた間柄である。
2006年2月、Gマンションの引渡しが完了する。Gマンションの魅力は、100㎡超・3方角部屋・自然一望のロケーションであった。
目論見どおりに、賃借の入居申込が入る。賃借人は1部上場企業であり、入居者は同札幌支店長であった。同支店長とも面談させて頂き、入居に関する応諾を判断する。
翌日、同支店長より連絡が入る。
「合意賃料を20,000円引上げ、引上げ後の賃料で弊社とオーナーP氏との間で賃貸借契約を締結して頂きたい。20,000円の過剰賃料に関しては、経費を控除して18,000円を、私(支店長)の個人口座へ返戻して頂きたい。」
余計な質問をせず、
「判りました。オーナーP氏へ報告の後、可否判断をお伝えいたします。」と回答する。
駐車場使用料金(社宅の場合、駐車場使用料金は個人負担の場合がある)であることは容易に想像できる。転勤族のサラリーマンにとって、「されど20,000円」の感覚なのだろう。
P氏へ報告する。「仕方ないですね。」と合意頂き、同支店長と「覚書」を取り交わす。
(6年後、この「覚書」が本件業務終了への鍵となった。)
Gマンションには管理会社もあり、管理員も常駐であったが、何故か私が何でも相談のよろず窓口にされてしまう。
2006年3月、賃貸借契約が締結され、支店長一家が入居する。関西からの転勤であり、奥様は始めての北海道居住、お子様(中1・小4)も同じであった。
2008年4月、同支店長より連絡が入る。
「居間入り口ドアの取っ手が壊れた。故意で壊した訳ではないので、確認して頂き、修理して頂きたい。」
翌日、朝一番にお邪魔し、破損部分を調査する。原因はストライクボックスの緩みのため、取っ手の開閉不良が発生していた。ボルトを締めるだけで元通りとなる。こんなことで呼び出されて。という感情は押し込めた。
それよりも気になったのは、室内の惨状であった。惨状という名に等しく写ったが、在宅されていた奥様は意に介さない様子であった。そのようなご主人(支店長)とは思えなかったが。
結果のみ、P氏へ報告した。
2010年9月、ご主人より連絡が入る。
「暖房給湯ボイラーが作動しない。お湯が一切出てこない。」
翌日、朝一番にお伺いし、ボイラーを操作する。リセットスイッチ(耐震装置)がOFFになっており、当然お湯は出ない。備え付けの取り扱い説明書を読めばすぐ解ることであった。ONに切り替え辞去しようとしたが、在宅中の奥様より「修理費用はかかるのでしょうか。」と質問され、結構ですと伝える。しかし、ご主人には今後のこともあるので、まずは説明書を読むなり確認してから連絡していただきたいと伝えることにした。
室内の状況は相変わらずであった。ご主人の携帯番号を聞き、電話する。なんとご主人は、入居後1年ほどで再転勤になり、単身にて赴任しているとのことであった。今般のクレームも奥様が何もわからず、まずはご主人へ相談したことによる連絡であり、ご主人も原因がなにも理解できないで当社へ入ったクレームであった。
以後、注意していただきたい旨伝え、辞去した。
「非常識ですね。」報告を聞いたP氏の一言であった。
同年11月、奥様より連絡が入る。
「暖房機が作動しない。説明書のマニュアル通りに操作しているが反応しない。」
暖房熱源供給会社の緊急センターへ通報し、応急対応を行う。結果、入居者の誤操作が原因であった。緊急センター出動費用3,150円が当社へ請求される。
ご主人へ連絡し、ご主人からの謝罪とともに、請求書の転送を告げられる。
P氏より、当社への厚い謝罪と労いの弁が繰り返された。
2011年2月、奥様より連絡が入る。
「3年前のドアの取っ手が完全に壊れた。修理して頂きたい。」一抹の疑問を感じながら、翌日朝、実査する。取っ手のラッチ及びストライクボックスが何度もいじられたような、素人の修理であることが見てとれた。勿論、経年劣化による損耗もあるが、明らかに素人修理による損壊であった。
取引先の工務店へ手配し、新品へ交換することとした。
工事完了の連絡が入り、費用請求を悩む。しかし工務店社長より、「お困りのご様子、当社(私)との関係もあり、今回は無償です。」と私へ伝えられ、更には直接入居者へも伝えられていた。
入居者は大変喜んだとのことで、工務店社長も上機嫌で報告してきた。
「工務店にとっては恩を売ったつもりだろうが、余計なお節介であり、いい迷惑だ。」P氏と私の共通点であった。
2011年9月、ご主人より連絡が入る。
「浴室シャワーのシャワーカランが脱落した。先日、マンションの受水槽清掃があり、清掃完了後蛇口を開放したら、水圧の勢いでカランが破損した。それと、居間の照明器具のフードカバーが外れたまま元に戻らない。」
ご主人は経年劣化を強調し、自分たちの使用責任は一切無いことを告げられる。P氏へ一報を入れ、まずは工務店担当者と同行し実査した。ご主人は不在であった。在宅していた奥様に聞いたところ、奥様からご主人への連絡だけで、ご主人が実物も確認せず連絡を寄越したのであった。
シャワーカランは、受水槽清掃を行った管理組合が原因、居間の照明は、何らかの理由でカバーを脱着した時に、外的圧力によりストッパーが破損し、取り付け不能となっていた。入居者が原因であると推測をたてていたが読み通りであった。シャワーカランは、管理員を経由して受水槽清掃業者へ連絡し、即日修理が完了した。勿論、管理側責任である。照明器具は修理不能なためカバーを撤去し蛍光灯露出のままとさせて頂いた。
カバーが無くなり、居間の照度が上がる。逆に入居者に喜ばれるも、複雑な思いは拭えなかった。
その日の夜、P氏宅にて協議する。結論としてP氏より、
入居者に退去していただく。
同時に法人との賃貸借契約を解除する。
解除が完了した後、本物件を売却する。
以上の方針に伴う、手続きフロー・懸案事項・解決方法・スケジュール・業務請負方法などを協議し、翌日再打ち合わせすることとなる。
翌日、今後の方針が決定する。
書面は内容証明郵便にて行う。
当社(私)をP氏の代理人とし、今後の一切の交渉窓口とする。
立退き費用は、一銭も拠出したくないが引越し費用相当額程度を上限とする。
スケジュールは完了まで6ヶ月以内の、平成24年3月末日とする。
立退き完了後、リフォーム工事を実施する。
よって明け渡し時の原状回復は全て免除することを武器とする。
リフォーム終了後、売り中古マンションとし市場へ公開する。
公開価格は、最低に基づく○○○○万円とする。
販売代金回収まで、当社が全て業務を請け負うこととする。
上記全業務を「不動産コンサルティング業務」として、総括代金を合意し、P氏との間で、不動産コンサルティング業務請負契約が締結された。
請負代金の半金を着手金として、2011年9月某日、本件コンサル業務が開始した。
一般論として、現行立法において前記の立退き条件では、まず立退きは無理である。
しかし、何故か立ち退かさすことに自信があった。
契約解除に伴う内容証明を賃借人法人へ送達する。
先方へ到着と同時に、賃借人実務担当者のZ氏から事情説明を求められた。
賃貸借契約書第○○条による賃貸人からの6ヶ月前予告解除であることだけ伝える。
担当者Z氏より、「正当な事由がなければ、解除できないはずですが・・」
当方より、賃貸借契約書の条文に基づく解除です。それのみを伝える。
6ヶ月以内に退去お願いします。と伝える。
数日後、賃借人である上場企業の代理人として、有名なB社より、賃貸借契約解除に伴う交渉の、代理権限を有する受任通知が送達される。同時に、契約解除通知に対する回答書が送られる。
第一に、解約理由の提示が無い解約申入れは・・中略・・解約が成立するための正当事由には該当しない。
よって賃貸人からの契約解除の申し出を一切を拒否する予定であるが、賃貸人の事情も勘案し、解約条件が折り合えば解除を応諾する。
その条件として
敷金全額返金
契約締結時の仲介手数料返金
転居先への引越し費用(らくらくパック)
転居先への仲介手数料
転居に関わる諸経費(賃料1か月分)
原状回復の免除
当然の要求であり、早速、返答させていただく。
敷金は全額返還させて頂く。
引越し費用は、当社指定業者且つ札幌市内が条件にて負担する。
原状回復の免除
札幌市内は空室物件が多く、借り手市場であり、仲介手数料無料・一定期間家賃免除物件も多い、といった実事例を添付して、返答する。
同時に、当社HPにおいて当物件の「売マンション」としての広告を掲載する。
2週間後、賃借人代理人B社より、
仲介手数料無料の物件はほとんど無い。
あるのであれば、数多くの物件を紹介せよ。
貴社HPに本物件が売りに出されているが、この契約解除と関係があるのか、逆論からいえば、建物を売りたいから解除したいのか。
話は戻るが、やはり正当な事由を教えて頂きたい。
以上の質問が入る。
明確に回答すると同時に、当方の手の内を公開する。
仲介手数料無料且つ一定期間家賃免除物件且つ、近傍する類似物件を送付する。
建物を売却したい事実は伝えるも、賃貸人の都合であり本解除には一切関係ないことを強調する。
正当な事由は、現行法規において5つの解釈がある。その全てが該当する。と曖昧に伝える。
そして手の内として、
ご主人へ内々に、18,000円の返戻金を中止し、正規契約に復元して頂きたい。理由は、賃料収入は確定申告の所得であるが、18,000円の支出は申告できない。と伝える。
次にB社担当者へ、入居者からの過去の苦情を全て伝え、この苦情全てが貸主にとって何らの責任の無いものであり且つ、この苦情は本来、賃借人である法人から通知されるものであったことも伝える。
更には、入居者は使用貸借しているだけにすぎなく、住宅に一切の愛着が感じられない。住宅使用に関し自己責任を一切回避し、ほとんど全てを相手に責任を押し付ける無責任論者であることを仄めかす。
2週間後、契約解除の条件が代理人B社より打診される。
条件は以下の通りであった。
契約当時の支払済み仲介手数料返戻
敷金返金
転居先の仲介手数料負担
引越し費用(民間のらくらくパック)
即日、回答させていただく。
金銭保証は、引越し費用のみである。
敷金は当然返金する。
以外の金銭は一切負担できない。
その他原状回復の免除だけである。
そして、以下の事項を付記した。
上記①~④の賃貸人側条件を応諾できないのであれば、本件賃貸借契約解除の交渉は中止する。
一旦、内容証明に基づく解除通知を取り下げさせて頂き、その後即日、予告期間6ヶ月前に基づく解除通知を出させていただく。
2011年11月末日、代理人B社担当者より私の携帯へ連絡が入る。
契約解除通知を取り下げし、改めて解除通知を出すとのことであるが、それだと居住権の侵害であり甚だ遺憾だ。
そうなれば法廷闘争となる。
それはお互いが望むことでは無い筈だ。
金銭保証は、賃貸人の最終条件を飲む。
引越し時期だけは、解除通知による明渡期日に拘らず余裕を欲しい。
何もいわず、解約解除合意書の案文を依頼する。
私のほうで作成しても構わないがと伝えるが、丁重に断られる。
P氏へ報告する。
2012年3月までの明け渡しになる可能性があるが、契約の解除は合意した。
解除に伴う金銭負担は、当初の予定通りであると伝える。
最後の交渉を開始する。それはご主人への内々の連絡であった。
読みどおり、正規賃料への改定要求が、早急な契約解除へ行き着いた要因であったと確証を得る。
確証を武器に、年内退去を丁重に依頼すると同時に、転居先決定への手続き業者(不動産業者)如何では、負担が軽減されることも伝える。
何を勘違いしたのか、頑なに固辞され、年内退去の可能性も示唆された。
2011年12月11日、B社担当者より、
「12月22日に入居者の退去引越しが完了します。鍵は退去完了後返却いたします。本日、解除合意書2通を郵送しますので、賃貸人代理人である株式会社 麗雅の記名押印をし、1通を送り返して頂きたい。」
2011年中の退去が確定する。
その後、リフォーム工事を経て、2012年2月、オープンハウスの実施により、 当初の予定額より、50万円値上がりし、本物件が売却される。
コンサル手数料とは別のボーナスとして、オープンハウスの成果によるマンション買主からの仲介手数料と、リフォーム工事の工事手数料が関係者から支給された。
素直にP氏へ報告するも、「当然ですよ。」と労われる。
平成24年3月
地中埋設物
本件土地所有者K氏との接点は3年前に遡る。
当時、札幌市が公募する認知症対応施設事業の目的地として、K氏所有地を選ばせて頂く。
飛び込み訪問にてK氏自宅へお伺いし、面談し度重なる交渉の上、当該事業が選定された場合の不動産売買(賃貸)に関する合意を頂く。
しかし、1ヶ所の事業公募に複数事業者の応札があり、選定の結果、落選してしまう。
だが、その時の交渉過程など、それなりの好印象を与えていたらしく、今年の3月に突然の連絡が入る。
「3年前にお会いしたKです。覚えておりますか。」
勿論、忘れるはずも無く即答する。
以下、K氏からのメッセージである。
当時は大変お世話になった、結果として落選したが、それ故今がある。
この度、先般の土地とは別の自己所有事業用地の売却を検討している。
高齢(75歳)になり、その場所での事業を廃業することとした。
ついては、その不動産の査定及び、売却価格合意後の売却に関する相談をしたい。
満足できる結果を期待する。
2日後、K氏宅へお伺いする。
K氏の事業用地概要は以下の通りであった。
土地 120坪
建物 築41年 用途:工場
西側は道路(国道)、東側は河川敷地(崖地、段差10M)に挟まれる。
南北両サイドは、北側が別荘と思しき住宅、南側が瀟洒な飲食店舗
独立開業のため昭和40年に土地を取得する。
その後、資金を蓄え、4年後の昭和44年に工場を建築し、今日に至る。
創業43年であった。
早速K氏同行にて当該事業所へ行き、内覧させて頂く。
河川敷地に面してのロケーションが素晴らしく、両サイドの建物もそのロケーションに花を添えていた。
査定を依頼される。
勿論、建物の再利用は不可能であり、建物解体費用は別途となる旨伝える。
査定額 土地(更地) 3,000万円(坪当たり25万円)が算定される。
しかし、実勢価格(成約価格)は、2,500万円程度が予想されると伝える。
K氏より、
「高齢であり、廃業も決めている。何時売れるのか判らないのは困る。売ると決めた以上、必ず売れる金額更には、即売却できる金額及び、数ヶ月以内に売却できる金額を提示して頂きたい。」
市場公開価格は2,500万円。概ね3ヶ月目処にて売却可能。
当社買取であれば2,200万円。即日決済。
K氏より、「判った。」
その後、K氏より、
「この土地の真下に雨水管が埋設されている。」
「昭和44年、当時の建築業者が地中に敷設されている雨水管を発見し、その管に地表面に溜まった雨水・融雪水の排水のための枡を設置し、管と接続した。」
百聞は一見に如かず。物を確認する。
驚きと同時に河川敷地をロケする。
巨大な排水管(直径700~800Φ)が崖下5Mほどから河川に向かって突き出ていた。
驚きを飛び越え、疑問と解決に気分が高揚する。
地表面の雨水枡からスケールを入れる。
管底部の深度は2Mであった。
排水管が使用されている痕跡は無く、管のいずれにも所有者・設置者を証明するプレート・刻印などは存在しなかった。
しかし明らかに河川敷地へ排水されていた巨大管である。しかも昭和44年以前に敷設設置された管である。
用水路の排水なのか、土木現場での排水なのか、いずれにしてもK氏の土地のための排水管とは思えず、又民間が設置したものとも考えられなかった。
多分この管は前面道路が砂利道の時代に、雨水などを集水し、排水するための管ではないかと推測した。
官庁の敷設物であれば調査は容易であり、処理もスムーズであろうと思い、
K氏へ以下のことを伝えた。
使用されている形跡はない管である。
某官庁が何らかの明確な目的のために、当時設置された管であると推察される。
土地を有効利用するためには邪魔な管であり、地中強度にも問題はあるが、大問題にはならず、解決できると思われる。
K氏は安心した様子であり、私も大した問題ではないと思っていた。
しかし、翌日以降この管が大問題に発展した。
翌日、各役所へ調査に行く。
道路管理者
河川管理者
道路内部の上下水道管管理者
結果、全ての役所において当該排水管の設置・敷設した記録はなく、当然、道路台帳・河川図面・上水道竣工図面・下水道竣工図面など、どの図面にもこの巨大管が存在している痕跡は発見されなかった。
しかし管径700Φのコンクリート管であり且つ40年以上前の敷設管である。
河川に突き出している管を見る限り、ヒューム管(鉄筋コンクリート管)と推察され、当時では大変高価な管である。
現在価値に換算すると、数千万円の設置工事に匹敵する代物である。
常識的に考えるまでも無く、当時の某官庁が敷設したものである。
この常識論をそれぞれの役所へ伝え、河川に突き出している実物を、各役所に見て頂く。
結果、各役所とも大前提として自分達が敷設設置した管ではないと断言するが、余りの巨大さに、民間が敷設設置する代物とは思えないとの非公式見解を述べる。
某担当者のコソコソ話では、本件土地を中心に周囲全体が原野(山)の時代、山の切り崩し、前面道路の築造などの土木工事における工事排水のための管であろう。との会話が聞こえた。
しかし、それが真実と直感した。
結論として、管の所有者・設置者が不明であり、更には管が使用されていない状況も明確である。
よって、当該地中管はどのような形で地中内に配管されているか否かに拘らず、敷地内に存在する管は、それぞれの敷地(土地)所有者の所有物と結論付けられる。
要約すると、土地所有者K氏の判断で、当該埋設管の撤去はできるということだが、万一道路側から埋設管が延伸していた場合などを懸念すると、解体撤去も簡単には判断出来なくなる。
そのような状況下、当該地の購入申込が道東の顧客より舞い込む。
目的は、川面を眼下に見下ろすロケーションのオープンテラスレストランであった。
構造はRC造2階建、2階部分をはねだした構造体であり、懸念通りの地盤強度を求められる建築物であった。
しかし購入条件も申し分なく、申込を断る理由がみあたらなかった。申込を受諾することを前提として、地中管に対する理不尽さを拭えずもK氏へ現状報告を行う。
管の存在は、敷地内を縦断し、道路内部へ延伸している可能性が高い。
理由は原野から現状に至る開発のための管であると推察。
しかし、当該管が敷設設置された痕跡・記録・図面などは一切発見できない。
よって、K氏所有地内に存する埋設物は、K氏の負担と責任において自由に解体撤去できる。
但し、管の存在により、その分の地盤強度が脆弱となっている。
その負担を被らないと土地の売却は話が進まない。
負担金を解明するためには、地中管の存在場所を全て確認する必要がある。
K氏より、
土地に存する問題点は理解した。
排水管の問題点は専門性が高く、自分たちでは処理できない。
また処理に要する時間も待ちたくない。
金銭解決が可能であるならばその方向にて処理したい。
地中管の存在調査が先行するのであればやって頂きたい。
その上で、土地を売却して頂きたい。
第三者からの土地購入申込が入った旨伝える。
K氏より、
「それであれば尚のこと、貴社に地中埋設管を了知の上、土地を購入して頂きたい。問題の抱えた土地を自分が直接売るのは憚られる。その後その第三者へ売却するための地中内埋設管のリスクなど全て引き受けて頂きたい。」
全て快諾し、「第三者のためにする契約」を特約として、不動産取得契約を締結し、同時に不動産コンサルティング業務が開始した。
1週間後 道路と敷地の境界部分を掘削する。
予想通りの位置及び深度に排水管を発見する。
使用されていない管であることは明白であり、各役所の見解もあり、その場で管に穴を開け内部を確認した。
道路内部へかなりの距離で延伸しており、起点は道路若しくは対面の土地であることが確認された。
翌日
道路管理者へ、写真を添付し報告を上げる。
翌々日
道路管理者より、「再掘削をお願いしたい。管内へファイバースコープを入れ、内部を調査したい。」
1週間後、道路管理者総勢10数名及び大型重機が搬入される。
ファイバースコープ映像を地上で見る。
道路内部4分の3程度進んだところで管は破壊され土砂で埋められていた。
同時に対面の行政所有地も掘削する。
しかし対面の行政所有地の地中からは何も出てこなかった。
結論は、道路面下部を起点とした直径700Φの排水管が、本件敷地を経由し、河川敷地へ排水されているという事実が確認された。
果してこの事実が今後どのように展開するのか。
数日後、道路管理者より非公式見解として、
起点が道路下部であることは周知の通り。
しかし、道路を築造若しくは道路を維持するために設置された管ではない。
発見はされなかったが、道路も横断されていた管と推測される。
しかし、対面の特定行政庁からも管の敷設設置の痕跡・記録などは一切発見されない。
非公式であるが、従前の見解と何らの変化はない。
弁護士2名へ確認する。
A弁護士
B弁護士
常識として特定行政庁が敷設設置した管であろう。
1年先か2年先か若しくは更に時間がかかるかもしれないが、事実を判明させることは出来るだろう。
よって、この管を設置した官庁へ撤去させ、原状回復を求めることが出来る。
しかし、判明するまでは土地は現状のままとなる。
一瞬、B弁護士に魅力を感じたが何年後かわからない決着を待つことが出来ない。
理不尽さは従前より増幅する。
官庁お得意の隠蔽かとも疑ってしまう。
本事例の結論は、
K氏の負担と責任で、敷地内に埋設されていた管を撤去し、管が存在していたことで地盤強度が劣化した範囲を負担することとなる。
負担金総額は数十万円程度に納まる。
唯一のメリットは、敷地内に存する排水管を撤去するため土地掘削を再度行うこととなり、
この掘削行為に便乗して、道路管理者及び河川管理者が、各所有地に残存された管を埋めてしまいたいと申し込まれた。
勿論、掘削工事費用は折半となる。
その結果、地盤強度劣化負担金が先般費用にて賄えたことであった。
K氏にとっては、追加負担金がなくなり、当初の思惑通りの売買代金で土地の譲渡が完了することとなる。
私にとっても、地中埋設物の存在が不動産コンサルティング業務を行わせていただけるきっかけとなり、業務結果は釈然としないが業務成果及び業務報酬は受領させて頂いた。
平成24年7月
児童デイサービス 開設
認定こども園と同ジャンル若しくは同一。
知的・肉体的障害をもつ子供たちを受け入れる施設、年齢は小学校入学前である。
幼稚園・保育園への入園とはいかない子供たちである。
養護学校とも一線を引く施設であり、いわゆる保育所と養護施設の中間的施設である。
札幌市内での現状は、入所させたいが施設も少なく又、既存施設も定員オーバーの状態であり待機児童と同様の状態とのことであった。
施設にお伺いする。
子供たちに何の罪も無く、無邪気に遊んでいる児童であるが、一般児童に比し感情表現が異なる。
そのこども達と事情を知らずに接した世間知らずな方や、非常識な大人にとっては嫌悪感を露にする輩も多いと思われる。
故に施設の立地に条件が付きまとう。
しかし、そのような施設へ入所させることの出来る保護者はそれなりの層であり経済力を有しているため、保護者の居住地はそれなりの住宅街が多い。
結果として、施設の所在もその住宅街に位置しなければならず、必然として施設設置のためのイニシャル・ランニングの両コストが高額な立地が多い。
平成25年3月、札幌市某区の同施設運営事業者の代表A氏より、同施設移転に伴う適所選定の依頼が入る。
A氏の説明では、現在運営中の施設を2年後に立退きしなければならない。とのことであった。
現在の施設は5年前に、5年契約で借りた賃貸住宅であったが、この度の契約更新(2年更新)に際し、建物所有者が再居住するとのことで、更新を拒否されたとのことであった。
よって、移転先を2年以内に決めなければならないということでの相談であった。
2年先の話か・・・、という第一感であったが実際は僅か2年という結果となる。
A氏より適所の条件を告げられる。
1.種類 戸建住宅
2.駐車場 屋外且つ大型ワゴン車3台分
3.規模 平家の場合(希望は平家)床面積50坪以上
2階建ての場合、各階面積30坪以上
4.構造 不問但し、増改築容認物件
5.年数 新築・中古不問
6.予算 賃貸の場合(希望は賃貸)、月額賃料25万円以下(希望は20万円以下)
売買の場合、6,000万円以下
改装工事費は500万円以内
7.立地 現施設の半径1Km以内(絶対条件)
8.環境 夏場、窓を開放する。この場合に奇声と勘違いされる声が響く。
又、屋外保育も適時行う。
この行動に対する環境的瑕疵をクリアすること。
瑕疵には法律的瑕疵・心理的瑕疵・物理的瑕疵・環境的瑕疵の4種類あるが、
一番厄介なのが環境的瑕疵である。
反社会的勢力が居住するような施設が近隣に存在することは当然の瑕疵であるが、葬祭場・老健施設・大音響施設・異臭施設などは、線引きに個人差があり、この個人差という曖昧がとてつもなく厄介な問題を引き起こす。
本件、コンサルティング業務もなぜか必然如きにこの問題がつきまとった。
A氏より今後のスケジュール及び作業として、
現施設の明け渡しは平成26年12月末日期限。
よって、平成25年の移動しやすい時期に移転したい。
施設内部は、バリアフリー・危険箇所改築・廊下階段の安全通路確保・トイレ2ヶ所などの設置。
よって、改築が伴う場合はそのスケジュールを考慮すること。
1ヶ月以内に賃貸物件の候補を挙げる。
その上で次の戦略を練る。
以上を告げられるが、直感として賃貸物件を選定することは極めて困難と思われた。
しかし同代表A氏へは、全てにおいて全力を尽くす旨約束した。
また、売買となる可能性も大きいため、包括的コンサルティング業務を受託することとして大筋合意し、
具体的な業務契約は、まずはマーケットリサーチを行ったうえで、締結することとした。
1週間後、賃貸案件を3物件リストアップする。
しかし、エリア外(若干)・面積ずれ・旧飲食店など、当然のように理想的物件は見つからない。
3物件をA氏へ公開する。乖離している内容の注釈を付記した。
A氏より、3物件のうちの1物件(旧飲食店舗物件)に興味を示される。
この物件は、敷地が広く駐車場も縦列だと6台程度は確保でき、建物も広く、もともと飲食店のため、
内装工事に関しさほど問題なく対応可能だろうとの客観的判断であった。
賃料は30万円であったが、充分交渉の余地ありと踏んだ。
この賃貸物件建物オーナーと接触した。
建物オーナーより、
・是非、お借りしていただきたいが、
・1ヶ月前に葬祭業者が家族葬などのコンパクト葬儀を目的として入居申込が入った。
・賃料も不問であり、オーナーとしても異存は無かった。
・しかし、オーナーと入魂の同町内の町内会長へ伝えたところ、
・町内会長より、「間違いなく近隣住民の施設開設への反対運動が起きる。」と伝えられる。
・調査をしないことには何も判明しないため、裏情報を頂き反対するであろう対象住宅数件へ挨拶にお伺いした。
・結果、烈火のごとく反対され、理屈か正論か理解不能の価値判断をつきつけられ、一方的な解釈で葬祭場は、環境的瑕疵としてのジャンルに該当されてしまった。
・葬祭業者は地域住民との共存共栄を目的とする事業主であったため、この物件を諦め他物件を物色することとなった。
・お宅の施設ははたしてどうなんだろう。
以上の結果をA氏へ報告した。
A氏より、子供たちに何の不安を与えることなく保育・養護しなければならない。
自分たちで解決できることが肉体的なことであれば労力は惜しまないが、それ以外は・・・・。
結果、見送りとなる。
それ以降1ヶ月、物件情報(賃貸)を入手できなく、中古の売家、売り地情報の調査も同時進行した。
A氏へは、賃貸物件の獲得をメインに進めても、物件と条件が一致しないケースが多々考えられ、同時並行として売買物件へも分野を広げた方が良い旨報告し、了解を得る。
但し、売買の場合は資金調達の問題が発生するため、事前に金融機関との調整を行った方が良いとの進言を行う。
結果として、市中銀行と政策公庫へ融資の可否及び融資額を相談に行くこととした。
問題は、売買の場合の希望予算、6,000万円という物件であった。
近隣の土地相場は、一般住宅地で坪当り50万円であり、100坪の土地を見つければそれだけで5,000万円となってしまう。
そうなると、建物付き6,000万円は当然無理である。
よって、土地面積を落とすか、中古物件を探すかと言う2択となった。
しかし、買物件での中古戸建物件は、プライドの高い地域特性から、表面に現れる物件が少なく、売家であっても、市場に公開されていない物件が多く存在する立地であった。
故に、発見される物件は売り地物件が殆んどであり、この場合は当然新築となってしまう。
しかし新築の場合は、述べ床50坪超且つ、特殊施設物件であり、諸費用含めて建物だけで4,000万円は必要になる試算であった。
結果、総予算の残額で土地を入手することはできなく、中古物件を探す(地上げを行う。)方針にて、今後の業務を行うこととなった。
マーケットエリアをローラーすることとなるため、業務範囲を取り決めしたコンサルティング契約を締結し、「児童デイサービス施設」を開業することが出来る業務を開始した。
この時点で、立退き期限まで18ヶ月、余裕を考慮して、12ヶ月以内の作業となる。
しかし当てなど全く無く、地道な戸別訪問からスタートすることとなった。
本件コンサルティング業務の結末は、
平成22年12月に完結した、私の不動産コンサルティング事例報告Vol.11の「特殊な不動産」を、当時購入して頂いたE社長からA氏の運営する法人に譲り受けることで完了した。
灯台下暗しとは当にこのことであり、因果とも思える結果が待ち受けていた。
フィクションドラマのような展開であったが、偶然ではなく必然と解釈できた。
地道な戸別訪問も1週間程度の現地作業にて限界が訪れた。
当然見つかるわけが無く、徒労に終わる毎日であった。
「出来ませんでした。」の一言で白紙になる業務であり、日銭を稼げる業務への誘惑がおそってくる。
1ヵ月後、A氏への中間報告中に何故か「特殊な不動産」の話を行ってしまう。
「特殊な不動産」は、移転先エリアから外れていたが(約2Km)決して遠くではなかった。
しかし、現施設の半径1Km以内という絶対条件があり、初めから意識外の建物であり、ましてや「子供デイサービス」向け物件には、全く当て嵌まらないものとして、潜在意識から除外されていた。
しかし今までの業務期間中、何度となく「特殊な不動産」の廻りを通過するたびに過去を思いだしていたことも事実であった。
A氏もエリア外であり聞き流した雰囲気であったが、翌日の夕方、私の携帯が着信する。
「中を見たい。可能だろうか。」
E社長へ購入して頂いてから3年を経過していなく、当時の購入経緯も、決して皆笑顔という結末でなかった印象もあり、A氏からの連絡に戸惑いを感じてしまった。
「売る可能性があるとは思えませんが、勿論、聞くことは出来ます。」
「環境が良い。更には駐車場も問題ない。建物も工夫次第では理想的とも思える。
エリアから外れているが、他の既存デイサービス物件が近隣にない。行政とも相談しなければならないが、移転先の立地として決して不適ではないと思える。」
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前所有者 S氏
現所有者 E社長
購入希望者 A氏
3者に共通するものを感じる。
俄然やる気が充満するも、瞬時に「取得は不可能では・・・」と意気消沈してしまう。
「特殊な不動産」の現在の施設利用状況は、
1階の店舗がブティックとして使用(賃貸中と思われた。)、
2階の応接・宿泊部分は、殆んど使用されていない雰囲気であった。
翌日、当時の査定書を確認し、当時の売買経緯を思い出し、方法論を検討する。
結果、前所有者のS氏に相談することで、何らかの解決策が見出されると直感した。
S氏へ相談した。
ドラマが始まる。
S氏とA氏は知り合いであった。
類のなかには、私も含まれていた。
これが必然なのであろう。
チーム同士が戦うスポーツの世界で、「流れがこちらに来た。」というフレーズをよく耳にするが、
不動産実務においても、交渉中など同様の流れに遭遇し、やることなすことが全て上手く行く事がある。
このような事態に遭遇することは、決して偶然でなく、実際には知力を総動員し、あらゆる場面を想像し、あらゆるリスクを排除しながら、常に歩んでいるときに、その事態が発生している。
それが不動産業での流れを掴むときである。
コンサルティングマスターの資格者ゆえになせる業務である。
守りに入らず、常に攻める。
攻める手法も、カーブありスライダーありフォークあり、そしてストレートありである。
本件コンサルティング、
平成22年に、5,400万円でE社長に購入頂いた「特殊な不動産」(事例報告 Vol.11)を、
122%アップした、6,600万円で、E社長からA氏へ売却する業務を行い、完結した。
このコンサルティング業務、
E社長も満足し、A氏も満足となった、ウィンウィンの結果となった。
「特殊な不動産」であったが、社会福祉施設として蘇えり再生した。
園児の通園に伴う安全性、相隣問題の解決、施設内の配置構成、どれをとっても行政からAランクの評価を頂いた。
事業としての収益性も、移転前の施設に比し、大幅に向上した。
不動産コンサルティング業務のなかで、充分な成果と結果のでた業務であった。
平成26年9月
一棟売
昨年9月 札幌市の不動産会社E社より、札幌市某区の収益不動産物件情報を入手する。
1. 種別 RC造11F 共同住宅
2. 概要 全レジデンシャル 1L 10戸 2L 20戸 3L 10戸 総40戸
3. 築 平成19年9月新築 築6年
4. 面積 土地 270坪(容積200%) 建物 延床580坪
5. 価格 土地建物 総額4億3,000万円
6. 年収 ①住戸 3,500万円
②駐車 400万円
③他 100万円 計 4,000万円
7. 支出 ①管理 200万円
②租税 150万円
築年数も浅く、地下鉄駅徒歩9分及び、ファミリータイプの賃貸マンションであり、早速、当社クライアントへ紹介する。
2社から問合せがあり、関東在住のA社は2日後に来札し、物件を実査した。
翌日、A社の購入申込書を作成し、本物件所有者宛、不動産業E社へ提出した。
1. 購入希望額 4億3,000万円 但し、内税
2. 条件 融資条件(融資申込み先 メガバンク)
3. 期日 平成25年12月末日 一括決済
4. 融資承認 平成25年10月末日目処
その数日後、メガバンクの暴力団融資が表面化し、メガ4行の融資が突然硬化した。
同時に、地方都市でのレジ系賃貸マンションがミニバブルの様相を呈し、金融機関での価格査定が厳しくなる。
特に、札幌と福岡は更に厳しいとのことであった。
A社代表より、
「物件は取得したいが、年内の融資が無理かもしれない。融資交渉は他行へも行うが、各行同様の様子である。従って、期日を来年まで延期することは可能だろうか。」
購入申込を行ったばかりであり、売渡の意思確認及び、売渡条件など何も出ていない状態であり、
「今は静観しましょう。」
まずは、所有者の意思確認を優先した。
不動産業のE社からは、
「物件の売却は間違いないが、その他の購入希望者も募っている。入札を行うわけでもないので、最高値及び購入条件での比較となる。今現在はA社のみとのことのようだ。」
その後1週間、何の連絡も入らなかった。
逆に、メガバンクの雲行きがますます怪しくなっていった。
更に1週間、何の連絡も入らなかったが、メガバンクの年内融資はまず無理であろうとの結論が出る。
メガ担当者からは、
「金融庁の査察は年内続くであろう。来年3月ぐらいにはほとぼりが冷める。そのころに再審査のうえ融資を再検討したい。」
折りしも売り渡しに関する意思表示も公になっていなかったため、融資持ち込み先を変更し、道内行へ打診した。
時期は10月中旬を迎えていた。
道内行5行に持ち込む。
各行融資担当者全員が興味を示すも、
・ 法人及び代表者の主たる所在地
・ 融資額
・ 既存借入(数十億)
・ 自己資金なし
などなど、クライアントの属性とは別の、通常での入口で頓挫する。
しかし、融資のための膨大な資料(A4 1,000枚)提示と、絶対的な信頼の属性面から、入口は開放して頂く。
3行からは翌日に、「当行の融資条件に合致しなく、取り扱いが出来ない。」との断りを受ける。
内規に合致しないことは端から判っており、内規に合致させることを前提に仕組んだのである。
更には、本来であればメガが無条件で融資する融資先であり、優良な案件である。
その説明も初めから行っており、その上で取り扱い及び審査をあえてお願いしたのである。
脆弱な基盤の北海道経済、それを支える気構えもなく、日々の惰性に流されているとしか思えない企業と取り巻き。
その最たる代表が道内行であった。
2行残るが期待は出来ないと判断した。
しかし一縷の期待は残したが。
時期は10月下旬となっていた。
不動産業のE社より、状況確認の連絡が入り、現状の状況を包み隠さず伝える。
E社も本件成就を願っており、
・ 本物件の取得希望者は現れるが、A社を上回る見込み客は発生しない。
・ A社の年内決済が難しいのであれば、来年3月を期日とした購入申込書へ変更し、再提出してはいかがだろうか。
・ 所有者は法人であり、決算が3月のため、年内決済に拘らない筈である。
本物件の売却理由は、所有者(法人)のグループ会社再編に伴う資産売却であった。
一種の債務整理であるが、物権の単体収支は収入が上回っているため、決済を3月へ変更することは関係者一同、不問と思われていた。
但し、来年3月に間違いなく融資が承認されるという見通しも定かでなく、A社側にとっても流れに任せている状態であった。
その後、E社より、
「所有者の同意を頂いた、来年3月に決済をお願いしたい。」
しかし、別な事情がその3月期に発生し、本件売買がその3月に不測の事態を引き起こした。
「所有者の同意を頂いた」という説明も後々の問題となった。
以下、続く
ファーストフード
ハンバーガー、サンドイッチ、ドーナッツ
カレー、どんぶり、回転寿司
うどん・蕎麦、ラーメン
ロードサイドの単独店舗の閉店情報を入手する。
情報元は閉店物件の営業権者。
閉店する店舗業態は小売物販店であった。
閉店物件概要
敷地面積 400坪
建物面積 80坪
築年数 18年
態様 平成8年新築 リースバック物件
契約期間 20年
賃料 120万円(税別)
契約期間満了前の中途解除であり、ペナルティが発生する解除であった。
しかし、後継テナントの情報入手に全く困らない立地であった。
但し、現状賃料の相場は100万円以下であり、この乖離幅は、賃料交渉においてかなりの制約が入る物件であった。
事前情報を開示して頂いた本旨は、
期間内解除
解除合意の交渉業務
後継先の選別
後継先の交渉
後継先の事前公開
解除合意の武器とする
不動産コンサルティングマスター故の指名業務であった。
しかし結果として、不動産コンサルティング業務を遥かに凌駕する業務となった。
平成25年某月
前面道路南側に営業中のファーストフード店「A店」の店舗開発マネージャーと接触する。
当然の結果
「既存店舗がなければ当然出店したい。」
既存店舗の他店転用を示唆する
「前向きに検討したい。」
「しかし条件面が気になる。」
「一両日、時間がほしい。」
翌日、A店マネージャーより、
「来週、本社役員が来札する。是非会って頂きたい。」
翌週、執行役員G取締役と面談、
是非、後継テナントとして立候補したい。
現賃料は100万円以上と推定されるが、上限100万円として、何とか80万円程度にて借りれないだろうか。
既存店舗は自社の他業態営業店舗として契約を継続する。
業態は「ワンコインのどんぶり店」
関東では、高級食材を使用したワンコインどんぶりとして認知されていた。
後継条件は普通借家、敷金などは常識の範囲で。
大変スムーズな滑り出しとなる。
閉店店舗の土地建物所有者(Wオーナー)と面談する。
既に、閉店に基づく通知はなされており、閉店に基づく条件合意も大筋了解を得られていた。
現賃料120万円は相場と乖離しており、相場は100万円以下となっている。
敷金も最近の事例は3ヶ月程度である。
後継先は上場企業であり、南側のA店の移転である。
Wオーナーより、
南側向かいのA店も賃貸であり、A店オーナーとは友人関係である。
移転後のA店はどうなるのか。(業態変更を説明)
2店とも同一の借主であり、上手くいくのか。
既存店が繁盛店であることは周知されており、移転後は更なる繁盛店となることは充分予想できた。新業態も「ワンコインどんぶり店」であり、充分集客できるものと推察された。
企業の与信情報でも、飲食店舗を展開する上場企業であるが、決してムラがなく、企業体力も充分なものであった。
もろもろの総合的な判断により、店舗閉店後の後継先として大筋の了解を頂いた。
合意賃料100万円
敷金6ヶ月
普通借家 期間5年
甲乙区分一般
店舗閉店まで3ヶ月となったとき、第一の事件が発生する。
新店舗の賃貸借契約締結を1週間後に控えていたときであった。
「来週の契約を延期若しくは、最悪の場合、反故としてほしい。」
「理由は、ワンコインどんぶり店の出店が役員会で否決された。」
「よって、移転は是非実施したいが、既存店の方針が決まらない。」
延期か反故かはっきりして頂く。
その上で、延期であれば、既存店の動向をはっきりと決めて頂くことを申し伝えた。
翌日
「店舗移転することは決定した。」
「既存店は転貸することとした。」
「よって賃貸借契約の締結は行うこととするが、転貸先が決まってからとしたい。」
断る。
「転貸の了解が得られているのか。」
「転貸には関与出来ない。」
「転貸の場合は既存店との商売競合もあり、オーナー・営業権者・関係者すべてのものたちの利害関係が複雑に絡み合い、その調整に困難を極めるとようそうされる。」
「そのような問題は一切が発生しないと言うのであれば、転貸先の決定に拘らず、新賃貸借契約の締結を履行して頂きたい。」
翌日
「やはり移転したい。」
「契約日を1ヶ月まってほしい。」
断る
「賃貸借契約の締結が出来ないのであれば、賃貸借の申込を行っていただきたい。
但し、申込金は100万円、一ヶ月以内に契約を締結して頂ければ申込金は敷金充当、
契約できない場合は、申込金没収する。」
申込書の案文を送付する。
同時に転貸に関し、
関与は出来ない。
現オーナとの合意を必ず得ること。
以上を申し伝える。
1週間後、申込書を受け取り、100万円の送金を確認する。
平成26年7月
相隣関係
下図。
所在地は札幌市、用途地域は準住居地域(容積率300%)
地下鉄まで、550M(徒歩7分)
A地
450㎡(150坪)
道路接面 間口2Mの旗竿地
車両乗り入れも極めて困難(降雪時は不可能)
固定資産評価は存在するが、売買は困難
よって、時価額は0円
B地
300㎡(100坪)
間口22M×奥行14M 整形宅地
2分割も可能であり、戸建・アパートいずれも可
時価額4,000万円(坪単価40万円)
しかし、A地+B地ではどうだろうか。
全体750㎡(容積300%)、分譲マンションを建設した場合、
RC造11階建
総戸数30戸
全3LDK(75㎡)
以上の建物が建設可能であった。
故にA地+B地の時価額は、B地単独と同額の坪単価40万円、総額1億円となった。
以下、本件不動産コンサルティングにおける実事例
平成25年3月、A地B地に隣接するC地600㎡(200坪)の売買が成立する。
土地取得者は当社(私が代表を営む会社)であり、目的はC地単独での事業化であったが、当然ながら、A地B地は当初より気になっていた。
C地の取得価格は7,000万円(坪当たり@35万円)である。
C地取得後、即A地・B地の調査を開始する。
A地・B地には、ともに長期間空き家の建物(木造2階建)がそれぞれ建っていた。
概要は以下の通りであった。
【A地】
土地・建物 同一所有者のO氏であった。O氏の登記住所は物件所在地と同一であったが、建物は長期間空き家であり、登記住所は変更せずに転居していることは明らかであった。
O氏の現住所を調査した結果、札幌市内に居住していることが判明した。
建物は築38年、土地・建物は平成8年7月(18年前)に売買にて所有権がO氏(女性名)へ移転していた。
外観のみの目視では、18年前の取得以降、一度も住んでいないと思える状態であった。
【B地】
土地・建物 同一所有者であったが、4名の共有(持分各4分の1)であり、
登記原因は昭和62年12月の相続であったが、登記の日付が平成17年10月であった。
登記簿から推察できることとして、建物は昭和44年に新築され、保存登記名義人はR氏である。土地は、昭和43年にR氏が売買で所得していた。
平成17年の相続登記では、4名共有であり、均等に4分の1であることから、
4名は全員兄弟であると判断できた。
R氏の奥様は、R氏が亡くなる前に離婚・死別していたのか、R氏の死後、平成17年
10月(登記日付)までに亡くなり、相続登記のみ中間省略されたものと推察された。
しかし興味を惹いたのが、共有者4名の中に、A地の所有者であるO氏(女性)が含まれていたことである。又、他の3名は2名が女性名であり、北海道外の住所登記であった。
残りの1名は男性名N氏であったが、序列4番目の登記であり、長男であるが、4兄弟の末っ子と推察された。この男性N氏の登記住所は札幌市であった。
よって推論の結論として、
R氏が昭和62年に亡くなる。
その時点ではR氏の配偶者(奥様)は存命。
しかし、奥様もその後亡くなる。
奥様の存命期間中は、娘であるO氏と同居して、B地に居住していた。
同居期間中は相続登記を留保し、R氏の名義のままとしていた。
(平成12年版の住宅地図にはR氏の姓名とO氏の姓名が住宅地図上に記載されていた。このことから、表札2名であり、同居の事実と推認できた。)
よって、R氏の配偶者は平成12年ごろには生存していたと思われた。
同居期間中に、A地の土地・建物が売りに出され、O氏が取得した。
多分にA地は安価であり、B地と一体となるA地の所得メリットは計り知れず、当然の取得をO氏は行ったのであろう。
その後、同居中のR氏の配偶者も亡くなり、平成17年10月に兄弟4名で相続登記を行ったのであろう。
推論をどのように組み立てようが、事実は一つであり、C地を取得した当社は、早速A地所有者のO氏と、B地所有者のうち、札幌在住のN氏へ接触することとした。
平成25年5月
B地所有者 N氏宅へ訪問する。
N氏不在であり、N氏夫人へ事情説明し、訪問主旨を述べる。
N氏夫人より、
「主人に伝えておきますが、主人から連絡が行くのか否か判りません。」と言われる。
翌日
A地所有者 O氏宅へ訪問する。
O氏は札幌市豊平区の賃貸マンションの(名称)「Oマンション」の1階に居住していた。
明らかに同マンションの所有者であり、1階を自宅として使用していた。
面談のアポイントもスムーズであり、まさに「待ってました」と言わんばかりの出迎えであった。
C地を売買にて取得した旨伝え、同時にA地・B地に興味があることを伝える。
O氏より、
「B地所有者と接触したのか。」と問われ、
N氏不在であり、夫人へ用件のみ伝えたと話す。
O氏より、
「B地は、自分たちの実家であり、兄弟4人が学生時代を過ごした家であった。
兄弟4人が独立した後、両親2人で住んでいたが、30年ほど前に父親が亡くなった。
暫くは母一人で生活していたが、次第に足腰が弱り、介護が必要な状態となった。
兄弟4人の内、長女と次女は北海道外に居住している。
3女の私たちO夫婦と末っ子であるが長男のN夫婦が、札幌に居住しており、母親の面倒はどちらかが見ることとなった。
母親の希望で、息子夫婦よりは娘夫婦の方が気兼ねなく、又、息子夫婦に面倒を見てもらう場合は、息子夫婦の家に引越すこととなる。
母親は実家を離れることが嫌で、結果として自分たちが、実家に転居し、母親と同居することとした。」 ほぼ推論と一致していた。
用件を切り出す。
「A地・B地、いずれも未使用であり、建物も老朽化し、危険な状態である。
可能性があるのであれば是非取得したい。諸条件も可能な限り応じたい。」
O氏より、
「10年近く、現在のままの状態であり、貴社と同様の話は何回も頂いている。
どの不動産業者もあの土地を見れば、何とか手に入れたいと思うのであろう。」
「結論から申し上げて、自分たちのA地を売ることは全く問題ない。
但し、売却価格は3,750万円(坪あたり25万円)が条件である。」
A地のみの単独価格としては、法外な金額であるが、B地如何であることは、当社もO氏も充分理解した上での価格であることは即理解できた。
B地に関する見解をお聞きした。
「B地の売却は無理であろう。」と一蹴された。
「母親と同居中に、A地売却の話が持ち込まれ、即決で購入することとした。
晩年の母親の体調が思わしくないときであった。
そのときは、兄弟4人全員へA地売却の相談が入ったわけでなく、自分(O氏)への話であったため、自分だけの判断と、自分の資金でA地の土地建物を購入した。
今から15年ほど前のことである。その数年後、母親が亡くなった。
母親が亡くなった後は、実家で生活するつもりははなく、自己所有の「Oマンション」へ戻るつもりでいた。
不動産の知識がなくとも、A地・B地が一体となる方が、B地のみの単独地よりも得であると信じていた。
バブルは崩壊していたが、当時の地価は依然として高い水準であり、知り合いの不動産業者へ相談すると、A地・B地一体であれば、総額1億1,000万円(@45万円)が相場であり、売るのであればすぐにでも購入申込が入るであろうと言われた。
母親の葬儀のとき、兄弟4人が久々に揃い、葬儀終了後の席上で、A地・B地一括での売却を提案した。
全員の賛同は得られたが、1億1,000万円を面積按分するというO氏の主張に対し、
(以下、O氏の主張)
総額 1億1,000万円(@45万円)
A地(旗竿地) 6,500万円( 同 )―――― O氏の取り分
B地(整形地) 4,500万円( 同 )―――― 共有者4名の取り分
以上の条件に他の兄弟3人が押し黙ってしまった。
翌日、兄弟3人より、
(以下、兄弟3人の主張)
総額 1億1,000万円(@45万円)
A地(旗竿地) 1,500万円(@10万円)―――― O氏の取り分
B地(整形地) 9,500万円(@95万円)―――― 共有者4名の取り分
以上が売却条件と云われた。
母親との同居期間中に複雑な諸事情が存在したことは、聞き込み中のO氏の素振りにより感じた。
更には、不動産以外の財産があったと思われるが、その存在に関する話が出てこなかった。
ただ長期に亘り、母親を看護(介護)したことは事実であり、A地の取得に兄弟が関与していないのであれば、O氏の主張に何らの懐疑性も感じられない。何故、兄弟3人がその主張を行うのか、その疑問をぶつけた。
O氏より、
「誰しもがそう思うでしょう。当時のB地のみの時価額は@45万円です。総額4,500万円です。A地があっても無くても価格(単価)は変わりません。
しかしA地と一体で売却という図式になった途端、A地とB地の査定が持ち出されるのです。その結果が、前述の条件となるのです。」
何故という疑問ばかりであった。
O氏より、
「A地の取得価格はただ同然と思っているのでしょう。更にはA地の取得に必要な費用も、生前に母親が持っていた預貯金を使用していると思っているのです。」
「当時は、B地だけでも譲って頂きたいと言う話も結構ありました。
B地だけの価格は、やはり4,500万円前後でした。」
「しかし、B地だけでの単独売却を行うとA地が死地となり、A地は未来永劫売れない可能性がある。よって、B地だけでの単独売却は、4分の1の持分権利者である私(O氏)が絶対に判を押さないと突っぱねています。売るときは、A地・B地の一括売却である。この一点張りでした。」
「それから全てが険悪となった。長女・次女は「それではB地は売らなくても構わない。将来自分たちの子供に財産分与することとする」と言われ、全ての話が反故となった。」
「以上が8年前の出来事であり、この8年間、ずっと空き家のままのA地・B地であることから、何度も私(O氏)のところに、あらゆる不動産屋より売買の勧誘問合せが入ってきた。しかし、兄弟とはこの不動産に関してのみ疎遠となってしまった。」
年末年始・法事などは大変仲の良い身内になるとのことであった。
C地を所有する当社としては、A地のみの取得でも、地型は不整形であるが利用出来ないわけではなかった。
しかし、面談当初の開口一番、「売却価格は3,750万円(坪あたり25万円)が条件である。」当社の思惑とする金額との乖離が倍以上あり、この交渉は先送りとした。
まずはB地所有者である共有者他3名と接触し、本音を聞きだしたかった。
O氏へ、B地所有者と接触したい旨伝えるも、
「是非、接触して頂き、状況を掴むと同時に何とか同時売却の方向へ持って行って頂きたい。しかし私(O氏)の方から共有者3名へ連絡することは出来ない。別件での連絡は構わないが、こと不動産のこととなると一切の話し合いを拒絶されてしまう。」
翌日、共有者3名へダイレクトメールを送付する。
長女は神奈川県横浜市に在住、次女は千葉県船橋市に在住していた。
長男N氏は札幌市内のため、DM到着を目処に再度の連絡を試みた。
N氏宅へ訪問する。
夫人が応対していただき、手紙が到着したこと、手紙をご主人は読んでいたことなどが確認できたが、ご主人は無反応であり、夫人としてもよく判らないと云われる。
訪問したことを伝えていただき、何とか連絡を取りたいことを切望し辞去した。
平成25年7月
B地共有者3名からは、いまだに何等の連絡もなかった。
DMは何度も出したが、無反応のままであった。
N氏へはその後、数度、電話連絡を試みたが、夫人との接触のみで、N氏ご主人とは一切の連絡が取れなかった。
O氏と面談し、この3ヶ月間の出来事を伝えた。
自分の経験上、ここまで行って、相手が無反応であれば、やはりその気が無いと判断し、交渉打ち切りとすることを伝えたが、最後の最後としてダメもとではあるが、横浜在住の長女自宅の電話番号をお聞きし直接電話連絡を入れることとした。
横浜在住の長女D氏へ電話する。
何故電話番号が判ったのかという質問には話を逸らす予定であった。
しかし、懸念は無用であり、過去のDMを全て読んで頂いていたのか、即、打ち解け、
条件面は後回しとした用件を伝えることが出来た。
長女D氏より、
「来月のお盆に、札幌へ墓参りに行く。1ヶ月ほど札幌に滞在するので、その間に、長男のN氏宅にも泊まる。N氏からも電話連絡が入っている。N氏とも相談するので、期待はしないで待って欲しい。」
不動産実務における経験として、「期待しないで待ってほしい。」との回答は、充分期待できるものである。
策を練る。
B地共有者4名のうち、未交渉の1名(Y氏 さいたま市在住の2女)との面談に何がしかの光明を感じる。
奇しくも別件での東京出張があり、そのスケジュールに合わせ、Y氏との面談を画策する。
O氏へ相談する。
長女D氏と電話で話した件
来月のお盆に、D氏が来札し、N氏と一緒に会って頂ける件
何がしかの可能性を感じる件
未交渉のY氏と面談したい件
以上を伝えたところO氏より、
Y氏と会ったことで全てが露見した。
(Y氏は長女D氏・長男N氏に一任)
同時に本件終局図が読み取れた。
憎むべき悪意は誰にも無い
公平さを欠く自己都合が存在
親の介護という対価に変えられない対価が存在
兄弟均等分割の概念の崩壊
B地の取得に自信を持つが、一番の問題は価格であった。
この価格交渉は、長女・長男との面談時に決着するはずであった。
お盆明けの8月24日(土)、長男のN氏より、私の携帯へ連絡が入る。
「自宅へ来て頂きたい。話がある。勿論、B地売却に関する話しである。」
山が動く。
翌週の水曜日はどうかと伝えると、
「横浜の姉も同席する。姉の都合を確認する。」
翌水曜日、午前10時、N氏宅
65歳位のN氏
度々お会いしたN氏夫人
75歳位のD氏と思われる長女が待っていた。
表敬挨拶もそこそこに、N氏より、
「裏のO氏と会っているのか。」
「O氏は何と言っているのか。」
など、自分たちの言い分の前に、O氏の本音を問われた。
O氏 VS 兄弟3人 の争いはかなり根の深いものと断定できた。
事態が理解できた故、O氏から聞きだした事情は咀嚼しながら伝える手段を講じ、まずは兄弟3人の本音を聞きだしにかかった。
私からの投げかけは、
共有者全員が高齢である。
売却せずに相続へ移行した場合、所有者が増え、更に売りづらくなる。
O氏 VS 兄弟3人 、この話し合いは全て私が窓口となる
買主が当社であり、手数料がかからない。
測量費用も、C地の成果を準用し、かなり安く上がる。
A地・B地の価格按分は私へ一任して頂きたい。
既に取得済みのC地は@35万円であること。
約2時間の前置きを経て、兄弟3人の本音を聞きだした。
売却希望額は@60万円
買主が誰であっても仲介手数料は払わない
建物の解体費用も買主負担
土地測量費用も買主負担
契約当事者は長男N氏、他はN氏へ委任状交付
9月第一週、
A地・B地、双方がリンクした売買契約を同時に締結した。
本件成就したことでの必須用件は、
状況変化に対し、可能性を先読みし、その交渉準備を怠らなかったこと
2通りの変化に対し、リスクの少ない方を選択しなかったこと
タブーとされる事案に、オブラートをかけながらも踏み込んだこと
そのタブーとは、兄弟といえども金は他人というエゴ
権利者全員と会い、各当事者の本音を聞きだすこと
幅広いジャンルでの不動産知識を随所に提示したこと
その結果、信用を勝ち取ったこと
以上が、不動産コンサルティングを行うためのソフト面での重要な要素であった。
取得は無理と思えた不動産を、直接交渉且つ、直接購入し、
目的地全体で450坪の敷地となる。
当然、ディベロッパーの注目も浴び、土地価格も再上昇した。
地域開発にも寄与し、周辺環境と地域相場が上がったことを付け加える。
温泉旅館
創業58年目を迎える老舗旅館。
現経営者は、創業オーナーから3代目となる私の友人。
交友歴は30年を経過する。
老舗旅館の不動産概要
【土地】
立地はJR駅に接する土地であるが、駅への乗り入れは約100M離れた踏み切りを横断し、反対側にある駅舎へ行かなければならない。
敷地面積 12,000㎡
内、原野8,000㎡ 残り4,000㎡がホテル敷地として開発されている。
原野8,000㎡内に露天風呂とともに源泉が湧出している。
駐車台数150台
土地の所有権は、先代(2代目)の個人名義
【建物】
築15年のRC造5階建
延べ床面積 4,000㎡
1階 フロント レストラン お土産・物販 フラワーショップ エステ・マッサージ
2階 宴会場 客室
3階~5階 客室
客室数 50室 客室平均面積50㎡
他、渡り廊下から浴場棟(内風呂 7浴槽 露天風呂 2浴槽)
建物の所有権は、3代目が代表を務める法人名義
【その他】
客室稼働率 65%
日帰り入浴客などの宿泊以外の来客は、年間平均20,000名(宿泊客とほぼ同数)
北海道新幹線の開通時期も決まり、将来、期待の高まる立地といえる。
車にて走行時間10分の大型のスキー場へは、JR駅前より無料送迎バスが運行し、冬期間は同旅館前にも停車する。
JR札幌駅へは乗車○○分
本件建物は平成8年まで、木造2階建ての施設(築40年弱)であった。
当時、このJR駅の改修工事とともに駅前再開発が着手された。
整備事業として大型商業施設が駅前に誘致され、もとより観光地としての人気地域であったが、更なるスポットを浴びる地域となった。
ダイヤも改変され、新千歳空港からの直行列車も運行される。
平成6年、年の暮れ、 銀行・行政・再開発組合の後押しもあり、駅前再開発に便乗し、この老舗旅館の建て替えを決意することとなる。
一連の経緯は当時全て聞かされていたが、私の関与は一切なく、3代目経営者の師と仰ぐ方の協力(実際にはその師と仰ぐ方が全てを仕切っていたのであるが・・)のもと、総事業費12億を投下して建て替えが行われた。
後日談であるが、企画料・設計料・業者選定更には、新館完成後のホテル運営に伴うコンサルティング業務(社員研修・インターネットの販路構築・プロスタッフの派遣・外部監査の導入)など全てをその師と仰ぐ方に任せていた。
任せたことは決して間違いではないが、経営は人なりであり、ホテル運営は水商売とたいして変わりはしない。
新館開業当初は、ファジーな状態が継続し、決してマニュアル通りにはいかないものである。
結果として立ち上がり期に、開業特需はあったが、当時の目標にはほど遠い結果となった。
12億という資本投下も膨大な額であるが、師と仰ぐ方に流れたお金は1億をゆうに超えていたものと読み取れた。
12億はほぼ全てが借入であった。
メインバンク+政府系金融機関で8億。
サブバンクが3億。
他1億が、代表者他身内親族からの借入であり、バランスシート上は、役員借入として計上されていた。
平成25年初夏、 3代目より連絡が入る。
「色々と相談したいことがある。お会い出来ないか。」
以下、本件不動産コンサルティング業務が開始された。
「父(先代)が高齢となり、いまだしっかりはしているが、万一のために相続対策を講じておきたい。」
資産内訳は、
土地(父(先代)個人所有地)
法人資本金(1億)50%は父親 30%が母親 20%が3代目の出資
短期借入金(5,000万円)も父からの借入
役員借入金(1億)のうち、3,000万円が父の資金
昨年度の決算書を見るなり違和感を覚える。
売上 2億
売上原価 ▲0.6億
販管費 ▲1.1億
支払利息 ▲0.2億
営業利益 0.2億
経常利益 0.1億
長期借入 7.0億
短期借入 0.8億
単年度の黒字は継続しているが、累損が減じず、短期借入がこの数年間全く減っていない。
相続対策として呼び出されたが、相続はイントロであり、経営に関する相談であろうと思われた。
しかし、まずは相続に関する課税関係の調査を行うこととした。
2週間後、相続税の課税対象額算定書類を持参し、再面談を行う。
同時に、経営に関し踏み込んだ質問を行う。
3代目より、
「数ヶ月前、○○ホテルチェーンのフランチャイズ事業部から連絡を受け面談を行った。主旨は、 ○○ホテルのFC提案である。」
提案書(A3 30項)を見せていただく。
マーケットリサーチ
現状の売上分析
FC化後の集客方法
IT活用
ランニングコストの引き下げ
支出改善
設備投資
データーの精度が高く、分析も掘り下げられ、説得力とともに信用のおけるレポートであった。
なによりFC後の収益改善に驚かされる。
現状客室数50室 宿泊可能人数100名 → 改善 客室数同数 宿泊可能人数150名
遊休スペースの客室化
現状稼働率 75% → 改善 稼働率 85%
ランニングコスト削減(▲20%)
CD手数料削減(▲40%)
フロント要員他、清掃要員などの体制見直し
しかし、設備投資が必然として伴い、提案では総額1億であった。
先日の決算書を見る限り、投資額1億の調達は無理であろうと思われた。
ただ、FC化後のロイヤリティを考慮しても、1億の投資は最短で3年、長くても4年で充分回収できる改善計画であった。
私へ情報を開示した本音を聞く。
メインバンク・サブバンクの横暴
短期借入金の実態
後継者問題
結論として、
○○ホテルチェーンの提案を武器とし、第3者へ付加価値のある収益不動産として、高値売却が可能であるか否か。
16年間の経営実績を武器に、売却以降の借り上げは可能か否か。
但し、定期借家を条件とすることが可能か否か。
売却価格に反映する定期借家賃料は相談可能か否か。
これがメインのサブジェクトであった。
以下、本件不動産コンサルティング業務が開始した。
CAを締結し、コンサルティングに関する業務請負契約を締結する。
まずは、原価法・収益還元法からの価格査定を行う。
結果
【原価法】
土地 4億(取引事例・公示価格・希少性)
建物 8億(再調達価格―償却年数)
総額12億
【収益還元法】
直近3年間のホテル収支より、土地建物を一括借り上げした場合の賃料を査定する。当然のこととして、赤字はありえなく、○○ホテルチェーンの収支改善提案の要旨を取り入れた場合、大幅な黒字となる賃料とした。
結果
月額賃料750万円(税別)、年額賃料9.000万円にて、土地建物を借り上げることとする。
建物内の各店子は、借り上げ賃料に含まれるものとし、店子との賃貸借は継続されるものとした。
本物件は、否レジデンシャルであり、投資家の投資基準もレジとは大幅に異なる。しかし、札幌市・RC造築15年・JR駅近接・再開発エリアなど、希少性高い特異不動産であることは周知の通りである。
よって、投資利回り基準を上限8.5%~下限7.5%と位置づけた。
7.5%の場合 12億
8.5%の場合 10億5千万円
3代目より内情を聞かされる。
1.短期借入0.8億は、父(先代)の親族からの借入であり、創業時より残債が変わっていない。理由は、メインバンクより元本返済を禁じられているからである。
2.長期借入7.0億は、銀行2行及び政府系金融機関からの借り入れである。平成20年に発生したリーマンショックにより、売上減少とともに、この10年間、度重なるリスケにより返済遅滞は一度も無いが、元本が全く減っていない。
3.僅かながら、この10年間、単年度黒字は計上しているが、累損が大きく、経営は苦しい。
4.売却した場合の、譲渡所得税・消費税・法人税を試算していただきたい。
方針が固まる。
暖簾の継承
否市場公開
道内企業
12億以上
定期借家(5年)
月額750万円
4ヵ月後、
不動産売買契約
設備機器 保守点検契約
従業員雇用契約
定期借家契約
テナント賃貸借契約
駐車場使用契約
都市計画(再開発)約定継承
インフラ名義変更
旅館業変更許可
損害保険変更
法人税
法人市民税
消費税
事業所税
償却資産税
固定資産税
譲渡所得税
金融機関交渉
消防署・保健所交渉
メンテナンス会社交渉
札幌市役所交渉
賃借人交渉
以上の手続きを経て、本件コンサル業務の序章が終了した。
借家契約がスタートしたことでの収支改善に伴う新たなコンサル業務が開始する。
終了は5年後。
平成29年7月
企業合併
北海道道南
歴史は札幌より深く、観光地としても全国トップレベルである。
同地において、創業60年となる法人T社と不動産コンサルティング業務を行うこととなる。
きっかけは、共通の友人の紹介である。
平成29年5月、T社のK取締役と当社事務所にて面談する。
目的は、T社が札幌にて所有する不動産の売却を、当社が受託する業務依頼であった。
売却物件は3物件、物件の謄本・販売資料を確認した。
他社不動産会社にて、既に札幌市場には公開されている3物件であったが、私より一言
「この価格では売れない。」
K氏も理解していて、
「幾らで売れるか。時期も含めて教えて頂きたい。」
「査定を行う。明日、回答する。」
本来であれば、それで事前交渉は終了し、査定額合意後、媒介業務に入るのみである。
しかし、当然の疑問をぶつける。
「何故、札幌に不動産を所有していたのか?」
「実は、札幌で当社100%出資の子会社を1995年に設立し中央区の事務所で貸金業を行っていた。この3件の不動産は、謄本を見れば分かるとおり、不動産担保融資における担保物件であり、債務者の返済が行き詰ることでの差押物件である。結果、競売を申し立てし、自社が競落した物件である。」
「競落後は、相当額の利益を上乗せし、売却を目論んでいた。」
T社の過去の本業は消費者金融であった。
消費者金融が全盛期の時代、不動産担保融資を行った貸金業者は数多く、物件差押など頻繁であった。
この3物件も、競落後暫くは乙区欄が白紙であったが、競落から数年後に地銀の地元支店が、極度額5億円の根抵当権を設定しその後、極度額が6億に引き上げられていた。
頂いた謄本に共担目録は添付されていなかったが、目録をとれば相当数の物件がお目見えすることと思われた。
必然として、物件数はこの3物件に留まらず、数多くの物件を処理しなければならないことは用意に推察できた。
T社のK役員へ質問をする。「札幌の法人はどうなったのですか。」
「貸金業規制法及び悪徳金融業者の排除、法定金利を超える過払い金の返済など、経営が傾いたことに加え、業界の社会的信用の失墜もあり、2005年に営業を停止し、
2011年に、T社へ吸収合併した。」
「この3件の不動産は、札幌の他の不動産会社へ売却を依頼していたが、売却業務の処理状況も報告されず、報告を求めても詭弁もどきの回答であり、又売れないことでの売るための方策も提案されず、正直困っていた。」
「しかし、社内事情も変わり、早急な売却が急務となり、縁があって貴社へ相談に来た。」
前段のきっかけとは、私の友人である加藤氏(仮称)がK役員とも友人であり、当初、本件相談が加藤氏へ入り、加藤氏から当社を紹介されたことがことの始まりである。
どのような不動産も処分は価格次第である。
一見であるが、3件の予定売却総額は1,500万円程度と読み取れた。
しかし、抵当額の6億には爪の垢ほどである。
逆に考えれば、T社の債権者であり抵当権者である金融機関へ、早急な返済を行わなければならないということである。
どれほど返済が進んでいるのか不明であるが、返済するためには価格に拘っていられないということである。
裏事情があることは用意に推察できた。
同時に、3件以外の不動産が気になり且つ、興味と言う感情が首を持ち上げた。
まずは売却に伴う媒介を合意し、業務を開始した。
開始2ヵ月後の平成29年8月、
3件全ての売却業務を終了し、売却代金を送金した。
送金と同時に、道南のT社本社にてK役員と再面談する。
T社は同地で、社歴60年の間、質屋・貸金・不動産賃貸業などを営み、知名度も抜群(悪い意味が殆んどのようである。)の企業であった。
他に、T社及びT社社長などが出資し30年前に設立した子会社のS社があり、S社は専ら宅地建物の開発分譲など、不動産事業を主体とする会社であった。
(その後判明するが、T社が表面上優良企業であるのに相対し、S社はT社からの不動産買取など、保有不動産は膨大であるが、それに伴う債務(殆んどがT社の連帯保証となっている)が、大幅な債務超過となっている瀕死の会社であった。)
K役員より、T社及びS社が保有する不動産の開示を受ける。
全てが、T社本社所在地界隈の物件であり、物件を記載したページは5ページに及び、
物件数は100物件をはるかに超過していた。
今後のことが走馬灯のごとく駆け巡る。
冷静さを装うが、内心のやる気は高揚する。
読み違いはあるにしても、やらなければならないことは理解できた。
K役員より、
「結論から申し上げると、S社をT社へ吸収合併させる。
双方の株価・債務・株主・所有不動産など、懸念する材料は無尽蔵である。
しかし、吸収合併は序章であり、終章はT社を清算(解散)し、債権債務を一切残さないことである。」
何故、吸収合併かという質問はさておき、
100件を超過する不動産処理が伴う。
その不動産が、どのような現状なのか理解する必要があるが、過去の経験と実務において、理解できない不動産などなく、また、処分できない不動産など、どこにもないことは、いやというほど経験し理解していた。
唯一の不安は地域の土地勘・文化・哲学・市場性の理解であるが、国内であり、相手は日本人である。(外人相手の取引では数多くの傷を負い、治療を繰り返しながら取引を行ったものである。)
地域に密着し生活することで、不安材料は充分払拭できるものと自分自身を洗脳する。
諸々の疑問点・質問を行い、吸収合併に至る経緯、吸収合併をさせるための外堀処理を理解する。
100件を超過する不動産は殆んどが手付かずであり、当然ながら全不動産の売却が必然であった。
過去の業務経験を駆使し、合併に伴う乗り越えねばならない問題点を合議する。
合議は深夜までに及び、結果として、当社が不動産処理業務を受託することで合意した。
不動産コンサルティングマスターとしての過去の実績が評価されたこと。
不動産以外の分野における業種知識が認められたこと。
不動産処理も、売却に拘らない提案(リース・信託など)ができたこと。
諸資料として
・ ダンボール2箱分相当の不動産関連資料(全物件)
・ T社・S社の決算書二期分
・ 札幌子会社の合併契約書
・ 開発不動産の行政書類
を借用する。
札幌へ戻る。
不動産査定を概ね1週間で終了し、今後、月1~2回程度の出張を予定した。
現地滞在時には、可能な限りK役員のご同行及び夜の会食をお願いした。
不動産の種類は以下の通りである。
1. 総区画数200区画超の宅地分譲地
2. 競売物件(空家中古住宅)
3. 賃貸住宅(オーナーチェンジ)
4. 区分建物
5. 山林(10ha規模)× 4案件
6. 市街化調整区域(物流など)
7. リゾート宅地
8. 商業地の戸建(店舗)
9. RC造(下宿施設)
10.借地(旧法)底地所有
11.その他
不動産コンサルティングマスターとして仕事冥利につきる業務である。
分析後、売却不動産の対象物件確定・売却額・売却方法、サブリース・リースバックなどの賃貸案件、などを区分けする。
不動産コンサルティング業務としての、
・ CA
・ 業務委託契約書
・ 業務報酬見積り
を準備する。
平成29年12月
T社S社と全てを合意し、業務を開始した。
業務期間は期間の定め無し、終了目処は2年後であろう。
平成30年12月現在(1年経過)
土地 約100区画(筆)
建物 10棟
の売却(所有権の移転)を行った。
太陽光発電
売電価格が36円/kwHの時代。
約4年前であるか、メガソーラー1ヶ所、50kwの低圧ソーラー4ヶ所を手掛け、現在発電中である。
しかしそれ以降売電価格が下落し、現在ちょうど半分の18円/kwHとなっている。
太陽光は過去のものと思い込んでいたが、某太陽光事業者からの連絡で、パネル(ソーラー)価格が下落している事実を知る。
もしやと思い
1、リゾート宅地 2,200坪
2、市街化調整区域内の宅地 500~700坪×7ヵ所
合計9ヵ所において太陽光パネルをシュミレーションする。
なんと土地価格次第ではあるが、利回り10%超の事業計画となる。
半ば諦めていた土地売却に光明が差す。
平成31年1月
北海道電力により、全9ヵ所のソーラー施設に「太陽光発電事業」の認定を受ける。同時に当社クライアントより同施設の買付申込みを受ける。
これにより売却予定不動産の約70%が売却される。
残り30%今年中に終わるだろう。
平成31年1月
「瑕疵」契約不適合
非公開
お問い合わせは、当社 谷口迄。
平成31年1月
立退き交渉
非公開
お問い合わせは、当社 谷口迄。
令和元年10月
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